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なるほど工場見学
bike factory tour

04自転車リム工場

text by 杉谷紗香(編集部)
関西エリアに拠点を置く自転車関連の工場をたずねる連載の第4回。 今回は、ツバメ×cycle号のメーカーでもある新家工業の関西工場へ。 約100年前、木製リム作りからスタートした同社は現在、国産リムを製造している唯一のメーカーだ。 工場でリムが大量生産される様子を見学した。

さまざまな大型機械が並ぶ、リムの製造ライン。リム内側の研磨作業が終わり、仕上がりを点検中。この後、外側を研磨し、美しく仕上げる。

   

自転車の車輪は、タイヤ、スポーク、ハブなどさまざまな部品を組み合わせて作られるが、中でもリムは車輪全体の基礎となる重要なパーツ。 大阪に本社を置く国産リムメーカー、新家工業の主力工場として1937年に建設されたのが今回訪れた関西工場。国内で稼働する4工場のうち、ここでは主に軽快車や電動アシスト自転車用のステンレス製リムが作られている。

関西工場があるのは大阪市西淀川区。 JR塚本駅〜加島駅間を通過している時、江崎グリコ本社の隣に建物と看板が見えてくる。 午後の操業が始まるタイミングに工場に入ると、操業開始を告げるヴィヴァルディのメロディが優雅に鳴り響いていた。

工場入口に掲げられた看板には「アラヤのリム・鋼管・型鋼」とある。 えっ、リムのほかにもいろいろ作っているの? 「そうです。リムの製造を通して、創業以来培ってきた“ロールフォーミング技術”で、さまざまな形の鋼管と型鋼を製造しています。リムも型鋼製品の一つなんですよ」と、関西工場長の木戸口 茂さん。 ここで作られた鋼管や型鋼は、ビルの内外装、橋の欄干、店舗のショーウィンドウなど、実は身近な場所で使われている。 「大阪ドームや関西国際空港、東京スカイツリーにも当社の製品を導入いただいています」。へぇ、すごい!

さて、工場内へ。リム製造ラインを見学させてもらった。 工程は大きく分けて、型鋼、溶接、研磨の3つ。創業者の新家熊吉が1915年に金属リム製造に成功した当時はすべて手作業だったが、現在の製造ラインは全自動。 4人のオペレーターが見守る中、1分間に10本という速さでリムを作り上げていく。

自慢のロールフォーミング技術が駆使されているのは、最初の型鋼工程。1枚のロール状の鋼帯が、フォーミングロール機の中を通過する間に、形の異なる約15のローラーで挟まれて少しずつ成形され、複雑な断面が作られる。 「ローラーのセッティング順を変えれば、違う形の型鋼になります。シンプルなL字型から複雑なものまで、一筆書きのできる断面なら製造が可能です」と木戸口さん。

リムの製造ラインは全部で6ラインあり、関西工場が建設された当初から変わっていないのだそう。 「この工場が作られた当初は、国内最大のリム生産能力を持っていました。ピーク時の1975年には月に100万本を製造し、国内だけでなく海外輸出の需要もかなり多かったのです。現在は1日1ラインを稼働中です」。 1枚の鋼から形作られ、製造ラインをリズムよく流れていくリムは、最後の工程を終える頃には、表面から継ぎ目が見えず、ピッカピカに磨き上げられている。 オペレーターが熟練の目で仕上がりを確認した完成品は、1ダースずつ梱包されて出荷を待つ。

ところで、関西工場にはもう一つの顔がある。 それは、新分野に向けての商品開発。 リム部門においては、特殊ホイールの製造を行っている。 企画・開発から製造、テストまでを一貫して手がけるのは、入社28年のベテラン鉄沢孝一さん。 普段は発送係を担当しているが、オーダーが入ればホイール職人に早変わり。 元々、ロードレースのトップ選手として活躍し、ヨーロッパへ遠征していた鉄沢さんは、帰国後その経験を生かして同社に入社。 月に数時間、主にトラック競技用のディスクホイールを工場内の工房で製造している。 開発したホイールは超軽量のエアロダイナミクスデザインで、1セット約26万円とかなり高額だが、世界選手権で金メダルを獲得したり、2012年のロンドン五輪で多くの出場チームに採用されたりと輝かしい実績がある。 「五輪出場選手をはじめとするプロレーサーに口コミで売れていますね。最近も国際レースで勝利しましたよ」と誇らしげ。

創業100年を支えてきた伝統の技術と、革新のテクノロジーの“両輪”で、これからもトップブランドとして進んでいく。

(本紙掲載 2013年12月19日)


ロールフォーミング技術を駆使した製造ライン。左側のロール状の鋼帯を圧延し、フォーミングロール機を通して成形し、右奥に出てくる頃には輪状に切断されて溶接へ。

溶接前のリムの断面。複雑なリム形状もフォーミングロール機のローラーの組み合わせ次第で自在に作り出せる。

ロゴ入りディスクホイールを手にした、特殊ホイール部門担当の鉄沢孝一さん。知る人ぞ知るホイール組みの名人。