back number

なるほど工場見学
bike factory tour

06自転車用品工場

text by 杉谷紗香(編集部)
岐阜県でサイクル用品を開発・製造するメーカー「ミノウラ」の工場へ。 タワー型スタンドや車用自転車搭載ベース、ローラー台といった大型アイテムから、シンプルなボトルケージまで、開発室で日々、ものづくりに取り組みながら、大小さまざまな商品が作られていく様子を見学した。

ローラー台「LiveRideシリーズ」の製造工程。ローラーは1本ずつ研磨して組み立て、コンピュータで回転の精度を調整する。


今回訪れた「ミノウラ」が本社と工場を構えるのは、岐阜県大垣市の北隣に位置する神戸町。 こうべ、ではなく、“ごうど”と読む。 西に伊吹山系、北に白山山系がそびえ、町のすぐ東に清らかな揖斐川が流れる水郷地帯だ。 最寄りの養老鉄道広神戸駅にはサイクルトレインが走り、長良川のサイクリングロードも近い。 「サイクリストにとっては天国みたいな環境でしょう」と笑顔で迎えてくれたのは営業統括部長の箕浦隆さん。 「山から川まで、自転車で走るフィールドは豊富にあるし、水もごはんもおいしい。私もここから見える池田山でダウンヒルを楽しんでいました」。

そんな自転車天国にあるミノウラの工場では、自社で開発した自転車アイテムを、部品加工から溶接、組み立て、検査まで一貫して行っている。 稼働中の製造ラインをのぞいてみると、プロレーサー仕様の練習用ローラー台、アルミ製ボトルケージ、ラック型スタンド、スマートフォン用ホルダーなどなど…、1ラインあたり3〜4名を配属し、多岐にわたる商品を次々に作り上げていた。

社長の箕浦浩二さんは、「私たちの工場は多品種少量生産。約800種と、商品の種類もかなり多いので、ラインによっては毎日作るものが違うんですよ」。 それだけアイテム数が多い理由は、開発部では年間に約20点(!)の新商品を商品化しているから。 営業部の箕浦隆さんもかつて開発部に在籍していたそうで、「開発に関わる上で大事なことは、自転車関連だけでなく多方面にアンテナを張って情報収集を欠かさないことと、アイデアの芽を見つけて商品化につなげる柔軟な発想力」だという。 思いついたらなんでもやってみる、という精神で、次々にアイデアを形にする開発部と、確かな技術力を備えた製造部。 それらを密接させることで、商品化までのスピードの早さと高品質を実現している。 最近では、より早く製品化につなげるために大型の3Dプリンターを導入した。

この開発力こそが、海外でも通用する競争力の源なのだな…と感心していると、印象的なエピソードを箕浦社長が聞かせてくれた。 「ローラー台に採用しているマグネット式加圧技術は、実は、釣りの最中に思いついたんです。私と先代社長は海釣りが趣味で、ある日、水深のある場所で魚を釣ろうとしたらリールの糸がからんでしまった。 糸を落とすスピードを調整できるリールを使ったら問題は解決したのですが、使っているうちに、この制動システムを自転車に応用できるのでは、とひらめいた。 早速、リールを分解してみると磁石を使った簡単な構造で、そこからヒントを得て開発を進めたところ、自転車の分野では世界初となる技術が完成しました」。 1988年に誕生したこの「MAGTURBO」技術は国際特許を取得。 その後、改良を重ねて、現在は世界一静かといわれる「LiveRideシリーズ」のローラー台に導入されている。

もう一つ、創業時のエピソードも興味深い。 かつて岐阜県は織物の名産地で、インドから運ばれてきた大量の綿原毛は鉄の帯で留められていた。 「鉄の帯は用済みになると捨てられていたんですが、それをリサイクルして自転車のカゴを作って、事業化したのが創業者の箕浦正次なんです」と箕浦社長。へぇ!

自転車用カゴとスタンドで1933年に創業以来、自転車関連アイテムを中心に手がけてきたが、3〜4年前からソフトウェア事業にも参入。 ローラー台と連動させて屋内練習ができる「LiveTraining」など、最先端の自転車用アプリケーションを販売している。 「本社から自転車で10分の場所に、ソフトウェア開発に強い情報科学芸術大学院大学(IAMAS)があったことが縁で実現しました」と箕浦隆さん。 箕浦社長は「自転車業界が過渡期を迎えているからこそ、新しいジャンルに挑戦したい。時代の変化があるから、我々の出番もある。今の時代に合った新しいものを、これからも提案したい」と語った。

(本紙掲載 2014年6月17日)


溶接前のボトルケージ。溶接が難しいジュラルミン製金属棒を、ほぼ完成形に近い精度で折り曲げ、溶接を容易に。

新商品の自転車用アクセサリーホルダー「LMA-H」の組み立て工程。設計図をチェックしながら手作業で行う。

工場の一角にある開発部で商品のテスト中。「現在の開発部は5名全員が自転車乗り。週末はどこを走った?と雑談からアイデアが膨らむことも多いです」(箕浦隆さん)。