back number

ガールズ&バイクス
girls & bikes

02 女は黙って三輪車

タクヤ(メッセンジャー&自転車屋)

前輪にまたがる自転車、ミショー型(ボーンシェーカー)は1860年代にできたのだが、女性はスカートをはかないとダメな時代なので乗れない。つまり自転車というのは男の物だった。というのが前回のお話。


じゃあ自転車に乗ってる女性はいなかったのかというと、たまにはいたみたいだ。

1819年にアンタイ・ストラドリング(からまり防止型)というロングスカートで乗るホビーホースがイギリスに存在した。地面に近い位置にフレームがある。が、シズシズ歩いているようでは自転車に乗ったと言えない。

1840年代にマクミラン型を発明したカークパトリック・マクミランの姪メリー・マーチバンク。グラスゴーで乗ってた彼女が初の女性サイクリスト。なんて話もあるが、マクミラン型は存在すら真偽の程が定かでない。

1860年代にはボーンシェイカーにまたがった女性の写真や絵画が残されているが、物珍しさが感じられる。中にはポルノまがいもものも。60年代末にはフランスのボルドーで女性だけのボーンシェイカーのレースがあったが、特異な事例には変わりないようだ。


実はこの時代に女性が乗るのを認められていたのは三輪車だったのだ。

三輪車というと、自転車の派生形のように思っている人もいるが、一輪車と自転車では乗り方が違うように、まったくの別物だ。ちなみに三輪車の方が歴史は古い。1680年にステファン・ファーフラーというドイツ人の時計職人が身体障害者用に手こぎの三輪車を作っている。また、ベンツが作った世界初のガソリン自動車も3輪だ。


ともかく、スカートと三輪車は比較的相性がよかった。3輪ならロングスカートで乗車できる構造が造れる。ただ重量が増すのは避けられないし、スピード感は失われてしまう。体躯を傾けることでカーブを曲がる自転車と、ハンドル操作で方向を変える3輪や4輪では操作感覚がまったく違う。

個人的な意見になるが、優雅で高貴な自転車と、自動車の先祖の不細工な三輪車では宿る精神が違うのだ。


1881年にはヴィクトリア女王が、ジェームス・スターリーのサルボ・クワッド型三輪車2台を購入して乗っていた記録がある。女王が乗っていいのだから「脚こぎの乗り物」自体は容認されていたのだろう。問題は、脚を見せることやパンツルックだったのだ。

(本紙掲載 2009年6月25日)