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ガールズ&バイクスⅡ
girls & bikes

07 a sense of unity

タクヤ(メッセンジャー&自転車屋)

丈の合ったパンツは着る人を美しく見せます。 どんなに有名なブランドの高級品でも、どんなにデザインが良いパンツでも、サイズが合っていないと野暮ったいですよね。

自転車も同じです。 この連載で以前にも話しましたが、日本の女性とシックリくるバランスが自転車にもあるのです。 言葉で説明するよりも写真で見てもらいましょう。

下の写真、青いツバメ号(ARAYA CCL)は佐奈さん。 普段はロードレーサーで走り回っている元気な女性です。 ツバメ号はレース用の自転車ではありませんし、この日の佐奈さんの服装はカジュアルですが、なんとなく俊敏な印象。 これは自転車と人間のバランスの問題なんです。 彼女の身長は153cm。Mサイズ(440mm)のツバメとよく合っていますね。

前後の車輪と上半身がつくる三角形に注目してみてください。 やや縦長の三角形のシルエットがピタリとキマって見えませんか? ヒラヒラ、スイスイッと自由自在に動く軽やかさがあるでしょう? これが、前後に長い自転車では、重心の低い、平たい三角形に見えてドッシリしてしまいます。 MTBならそれもカッコイイのですが、街なかを走り抜けるイメージはこの写真のバランスがスリムでいい。

下の写真の白いツバメ号のモデルは祐未さん。 身長は160cm。キュートな美人で、お仕事は料理人です。 仕事場のイタリアンレストランまで片道10km以上を通勤しています。 写真でも自転車にまたがる姿が凛々しくて、いかにもサイクリストって雰囲気ですね。

ところが、実は祐未さんはこの2月にツバメに乗る前には、折りたたみ自転車やママチャリしか乗ったことがありませんでした。 もちろんサドルの位置とハンドルの高さ、そしてブレーキレバーの角度は彼女に合わせて調整してありますが(←これ重要!ですから、ツバメ号はできれば通販ではなく自転車店で手に入れてください)、特にスポーツバイクに乗るためのポジションを勉強したわけではありません。 それにも関わらず、自転車との一体感があり、シュッと見えるのがわかってもらえるでしょうか。

関西以外の読者は「シュッとしてはる」ってわかりますか? 「端整」とか「スマート」なんてニュアンスです。 そして乗っている女性がかわいらしく見える自転車やスポーティーに見える自転車はいっぱい走っていますが、「シュッとしてはる」ように見える自転車を街で見かけることはめずらしい。 身長が170cm以上の女性ならチョイスは多いんです。 男性用でも海外の女性用自転車でも選び放題。 そもそも背が高いだけでスラリと見えます。

ところが、平均身長の人やそれより低い女性の場合、自転車のチョイスが非常に少ない。 最近はオシャレなママチャリや一見スポーツ車に見えるママチャリもあります。 デザイン次第で自転車自体はスマートに見えても、乗っている人はひざを曲げて土踏まずでペダリング。 なんとも生活感が出すぎてしまう。

ファッションを観察する限り、自分をシュッと見せたい女性って多いと思うんです。 身長やサイズと関係なくソフィスティケートされた服はいっぱいあって、平均的な体格の女性を洗練して見せる工夫がされているのに、どうしてそういう自転車は少ないのでしょう?

以前にも書きましたが、スポーツ車というのは白人男性の基準で作られたものが多い。 それを縮めて女性用を作るので、どうしてもアンバランスでカワイイ感じになってしまう。 凶暴なクマですら三頭身にすればユルキャラになってしまうように、これは比率やバランスの問題。

ツバメ号は日本女性の平均的なプロポーションから逆算して作りました。 なので、海外モデルならSかXSサイズになる440mmというモデルがMサイズです。 だって、それにフィットする150〜160cmの女性こそ、最も一般的な日本女性の体格なわけですから。

確かにデザインやカラーのステキな自転車は、選ぶのも困るほどたくさんあります。 自転車だけ見ればもっとスタイリッシュなものもたくさんあります。 こういった自転車は特徴的なデザインである場合も多く、それと比べれば、スタンダードさを目指したツバメ号は店頭やカタログではちょっと地味に見えるかもしれません。 だけど、日本女性を最高にシュッと見せるのはツバメ号だと思っています。 主役はあくまで乗っている人自身。 ツバメは最高の引き立て役になりたいのです。

(本紙掲載 2013年3月22日)