表紙コラム

Autumn2021

no.51

WEB掲載日

2021年11月8日

ショートパンツのサイクリスト フェルナン・レジェ「美しい自転車乗り」

1944年 油彩、キャンバス 徳島県立近代美術館蔵
「自転車のある情景 ART SCENE WITH BICYCLES」展より
八王子市夢美術館(東京)で2021年11月23日(祝)まで開催中 www.yumebi.com

世界大戦を機にフランスからアメリカへ渡った芸術家は、デュシャンやマン・レイ、モンドリアン、シャガールなど少なくないが、 フェルナン・レジェもそんな一人。第二次世界大戦中にアメリカへ亡命した。

イェール大学、その後ミルズ大学で教鞭をとり、そこで、パリの上品な女の子とは違う 自由な服装の若い学生たちに出会うことになる。それが刺激となって、サイクリストを主題とした一連の絵画が生まれたという。この《美しい自転車乗り》(1944年)もその一つ。

さて、レジェといえば、実験的な映画《バレエ・メカニック》(1924年)が思い出される。機械のシリンダーや、時計の振り子、金属製の道具、それに唇(!)などが音楽に合わせて踊るように動くリズミカルな作品だ。ほかの絵画作品にも人物とともにしばしば機械が描かれる。それはレジェが1914〜17年に第一次世界大戦に従軍して、大砲などの兵器の機能美に魅せられたからという。

Wikipediaには、1910年以前のレジェについて、「初期作品では人物が円筒形に還元されている。このことから、当時の彼の作風は『キュビスム(Cubism, 立体主義)』をもじって『チュビスム(“T”ubism, 土管屋)』と揶揄されたこともあった」とある。
  チューブとは! まさに自転車はチューブ。そして大砲も鉄砲もチューブ。第一次世界大戦前からチュビストで、大戦中は大砲に魅せられたチュビストで、第二次世界大戦中からは、自転車を描くチュビスト! そう思うと人物もチューブに見えてくる。というか、人間も構造はチューブであることに違いはない。

さて、白いショートパンツの女性サイクリストが1944年にいたのか?と思って、画像検索したところ、いました! しかもとっても楽しい二人を発見! それはドリス・ロイとテルマ・ポップ。大学を卒業したばかりの二人は、ニューヨークにある家から、オハイオ川がミシシッピ川に合流するイリノイ州のカイロまで自転車で冒険に出た。テルマ・ポップ・ジョーンズ(Thelma Popp Jones/1922–2016)が書いた日記『The Lure of the Open Road』はWebで全文読めるので、ぜひご一読を。
text by 塚村真美(編集者)
紙面掲載日:2021年10月22日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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