マディソン突撃レポート! no.52 夢の世界大会へ行ってきた 2023年、ついに横浜へとやってきたメッセンジャーの世界大会「CMWC(Cycle Messenger World Championships)」が、9月20日から25日まで6日間に渡って開催された。元メッセンジャーのマディソンは大会ボランティアと並行して現地取材。メッセンジャー色に染まった横浜の様子をレポート!

text by マディソン(ライター)

メイン会場は日産スタジアム!スペシャルなムードに圧倒されるマディソン。

国境を越え、交流し続けて30年

「CMWC」は、普段は街の隙間で働いているメッセンジャーたちが主役になる世界規模の自転車フェスティバル。速すぎて姿が見えない!?ともいわれるメッセンジャーを間近で感じながら、どんな風に仕事するのかを知ることができるイベントだ。

今回の「CMWC2023 Yokohama」ではレースはもちろん、アート展示やピクニック、参加者が意見を交わせるフォーラムなど、さまざまなプログラムが展開された。日本発祥の競技・競輪を深く知る競輪場ツアーや、子どもも楽しめるBMXスクールにデンマーク式じてんしゃゲームなど、国籍や年齢に関係なく“本当に自転車が好きな人たち”が喜ぶ内容ばかり!

レース後、圧巻の集合写真。28か国から377名がエントリー。写真:Masayuki “rocky” Tsuyuki

1993年に始まったCMWCは今年で30年目、第29回大会となった。開催都市は毎年変わるので、すべてのメッセンジャーが参加できるわけではないけど、それでも世界各地から大会のためにやってくる。会場は、いつもは離れて暮らす“大家族”がみんな集まったようなスペシャルな雰囲気。初対面の人と話してもハートはつながっている気分になる。

本大会のために来日したアメリカ出身の元メッセンジャー、OZONEさんとJAMESさんと会場で話すことができた。彼らはCMWC発起人で、世界的なメッセンジャー文化を共有するように務めた立役者。「サーフィンやスケボーのシーンに影響を受けて、メッセンジャーの世界でも年に一度、国境を越えてみんなで交流できる場を作りたかったんだ」とOZONEさんは語る。

30年に渡って特別なイベントであり続けているCMWC。特徴的なのは、スタッフやボランティアとして現役メッセンジャーやメッセンジャー経験者がイベントを支えていることで、本大会では350名のボランティアがさまざまな場面で協力しあった(私も通訳で“その一人”になれた)。デリバリーレースのOPENカテゴリで優勝したアメリカ出身のSAFA選手は表彰台から、「自分もCMWCを主催したことがあるので、どんなに大変なことか、よくわかっています。横浜チームのがんばりに非常に感謝しています」と褒め称えた。
 

「ジェンダー」はどの視点で見る?

本大会で印象的だったのは、カーゴバイクレースの全選手の中で一番速かったのが実は、WTNBの選手ということ。優勝したスウェーデンのSiri選手(写真)に大きな拍手を!

現在の日本からずいぶんと遠い「ジェンダー(社会的性別)」の視点で、世界基準の考え方を国内に届けてくれたことも、本大会の大きなトピックの一つ。2009年に東京で開催された「CMWC 2009 Tokyo」当時、レースもゲームも内容は同一ながら、結果発表ではMENSとWOMENSで分けられた。それから14年後のいま、参加者は「OPEN」と「WTNB」どちらかのカテゴリで登録する。

OPENには従来のMENSがジェンダー不問の意味合いで登録し、WTNBには従来のWOMENSにトランスジェンダーとノンバイナリーの選手が含まれる。このカテゴリ分けは2017年以降のCMWCで採用され、ジェンダーに関わらず参加者の居場所を確保することを義務付けている。包括的なメッセンジャー文化づくりに務める「*BMA(旧Women’s Bike Messenger Association)」が大きな影響を及ぼしていることにも注目したい。本大会ではOPENとWTNBの賞品が平等な内容で、本大会の公式SNSでもWTNBのレースシーンを積極的に紹介していた。全体的に見てWTNBの参加者はまだまだ少ないけれど、このような活動を続ければWTNBの参加者数は今度もっと増えていくだろう。

OZONEさん曰く、「メッセンジャー文化は誰だってウェルカム、受け入れる姿勢が根本的にある」。確かにそう。実行委員会にWTNBのメンバーを増やすなど、WTNBメッセンジャーが輝く文化は作れるはずだから。
 
紙面掲載日:2023年10月27日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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