[エッセイ] サイクルトレイン小咄 近江鉄道編 今号の特集は「サイクルトレインの旅」。というわけで、鉄道好きの自転車店店主・Bici Terminiの宮崎さんに、おすすめのサイクルトレインについて語ってもらった。鉄道好きの視点で走ると、電車以外にも見どころがいっぱい!

text by 宮崎浩二(自転車店Bici Termini店主)

「愛知川橋梁」。優美なトラス構造といかめしいリベットの接合部が時代を感じさせる。

特集に関連した小咄を...とのことで、いそいそとサイクルトレインを楽しんできました。お目当ては滋賀を走る「近江鉄道」。まず、JR大阪駅から輪行して特急「ひだ」で米原へ。このディーゼル車両は近々に置き換えが決定しており、さらに大阪発着便も廃止の可能性がありますので乗っておきたかったのです。また、早朝の新快速は混雑しがちなので、特急での移動はおすすめです。
 

近江鉄道の車内。サイクルトレインの利用可能時間は平日おおむね9時~16時、土日祝は終日。


JR米原駅に到着したら、直結の近江鉄道米原駅へ。米原駅を出発するとすぐ左側に「鉄道総合技術研究所風洞技術センター」があり、新幹線における過去の試験車両を眺めることができます。高宮駅は分岐駅。ゆったりとカーブしたホームを通り、多賀大社前駅にて下車、ほど近い「多賀大社」へ。伊勢神宮の天照大神のご両親にあたる伊邪那岐大神と伊邪那美大神が祀られています。

多賀大社のご神木。杉木立の中は比較的涼しい。


参拝後は約6km離れた山中にある多賀大社のご神木まで走ります。案内板を頼りに、ギコギコと登ると到着。交通量はほとんどないものの、それなりの斜度ですので、乗り慣れた方向けでしょう。ご神木に手を合わせてから、来た道を戻り、高宮駅付近から旧中山道へ入ります。このまま南下し、「豊郷小学校旧校舎群」を経て、偶然発見したうどん店で昼食。

さらに南下して近江鉄道の「愛知川橋梁」で撮影タイム。ここは北側の1スパンだけですが、明治時代後期のトラス橋がいまだ現役で、登録有形文化財となっています。明治時代からのローカル私鉄を支えてきた歴史ある鉄橋の背景には、最新の東海道新幹線が疾走し、その対比も見もの。さらに旧中山道を南下し、ところどころに残る往時の鉄道道標を探しながら走れば、JR琵琶湖線の近江八幡駅に到着。ここからは輪行袋へ収納しての移動となります。JR琵琶湖線は旧中山道とほぼ並走しているので、ペース配分や経由地、天候などの変化にも比較的柔軟に対応でき、初心者にも走りやすいエリアです。
コロナ禍により各鉄道会社は非常に大きな打撃を受け、乗客確保にさまざまな案をひねり出している状況です。サイクルトレインもその一端を担っており、皆で楽しみながら利用することで、少しでも良い流れを拡大していくことができればと感じた小旅行でした。
 
紙面掲載日:2022年7月28日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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