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Summer2021

no.50

発行日

2021年7月21日

自転車でやってみた! no.17 ピストのお勉強 自転車にまつわるあれこれを楽しく探求してみる連載。今回は編集部さなけんが、20代の頃に憧れつつも、未体験だというピストバイクについて。アラフォー男子がついに(いまさら)ピストに初乗車。しかも、職権を乱用して工房の見学まで!? いや、よい記事を届けるためのお勉強です!

text by 眞田健吾(編集部)

フレーム製作を一手に担う「gan well」橋本裕太さん。NJS認定工房では最年少ビルダーだが、丁寧なヒアリングと確かな技術で、選手からの信頼は厚い。

ピストバイクとは、競輪やトラックレースに使用される競技用自転車のこと。京都のハンドメイド自転車工房「gan well」の協力で、ずっと乗ってみたかったピストバイクに初挑戦! さらに、競輪用ピストフレームが製作される工房も見学させてもらった。ピストバイクの魅力に少~しだけ触れてみよう。

ピストの勉強① 乗ってみた

まずは、「gan well」のピストバイクを借りて人生初のピスト体験。変速がなく、ホイールが空回りする機構ももたない超シンプルな自転車。慣れるのに時間はかかったけど、こいだ分だけグイグイ進む感覚が楽しい!

[ ピストバイクってなに? ]

変速がない

ご覧の通り、前後ともにギアが1枚で変速機はなし。ギア比が変えられないので、速く走るには足を速く回すしかない! この潔さがピストバイクの魅力。

固定ギア

ペダルを前に踏めば前進、後ろに踏めばバックするのが「固定ギア」。一般的な自転車は足を止めても進むが、固定ギアはできない。イメージは三輪車に近い。

 

またいでみる

「いつも乗ってるロードバイクと同じでしょ」と思っていたけど、足を置くためにペダル位置を調整しようと思っても動かない。そうか、後輪も回さないといけないのか…。これが固定ギア!

こいでみる

恐る恐るペダルを回してみると、おぉ、動いた!「こぎ出しがすごく軽い気がする。ペダルを回転させる力が、無駄なく推進力に変わっているような」と思いつつも、へっぴり腰(笑)。

停まってみる

ブレーキを使えば問題なく停止可能。だけど、ピストバイクにしかできない止まり方にチャレンジ! 「ペダルを後ろに回すようにして、ゆっくり減速するんだ…」。結果は写真の通り。

走ってみる

しばらく乗って慣れてきたところで、長めに走ってみる。前進する力でペダルが回転するからか、あまり力を入れずともグイッと進む感覚。「これはめっちゃ気持ちいい!」と上機嫌。

 

ブレーキ付きのピストで撮影。ブレーキがない場合は、公道を走行できません

ピストの勉強② 工房に行ってみた

ピストバイクは、そもそも競技用自転車。特に日本では、競輪用の自転車として活躍している。その自転車は、NJS(日本自転車振興会)に登録された工房でしか作れないハンドメイドフレームだそう。ピストバイクの最高峰、競輪フレームを生み出す「gan well」の工房を訪問! 若きビルダーに直接お話を聞いてみた。

gan well

1976年にブランドを立ち上げ、1980年にNJSに認定。ピストバイクだけでなく、ロードバイクなどのフレームも製作。一般からのオーダーも受け付けている。

京都市南区久世殿城町162 / 075-874-6511/(京都オーダーフレーム工場)
https://www.iwaishokai.com/product/term/144

[ どうやって作ってるの? ]

パイプ&ラグ

フレームの素材となるパイプは、選手のオーダーや乗り方を考慮して最適な種類を選択。パイプとパイプをつなぐラグには「gan well」オリジナルのものもある。

ヤスリ

パイプを切ったり、仕上げに磨いたり、作業や部位によって約20種のヤスリを使い分ける。先端を加工して使いやすくしたものも。紙ヤスリも頻繁に使用。

冶具

「冶具(じぐ)」は、フレームを設計通りの角度や長さに作るための専用作業台。0.1度単位で角度を調整していく。もう一台、歪みを計測する冶具も使う。

溶接

バーナーで「ロウ」と呼ばれる金属を溶かし込んでパイプを接合。はんだ付けに近いイメージだ。部位によって真鍮ロウ、銀ロウなど3種を使い分ける。

[ ビルダーへ質問! ]

Q1 競輪フレームは街乗りピストと何が違うの?

「設計上の細かな違いはありますが、大きな違いはありません。ただ、競輪フレームはNJSで厳密に規格が定められています。たとえば、使用できるパイプが決まっていたり。規格の中で工夫して作ります」

Q2 選手からはどんなオーダーがあるの?

「詳細なオーダーもあるし、『グッと伸びるように』と抽象的なオーダーもあります。そんな場合は、選手の体格、走りのクセ、戦法などを考慮して、パイプ選びや設計の数字に落とし込みます。競技中の映像も参考にしますよ」

Q3 1本のフレームを作るのにかかる時間は?

「だいたい3日くらいですね。これに加えて、打ち合わせや設計する時間も必要になります。ちなみに、溶接する時間は3時間ぐらいで、半分以上はヤスリで丁寧に磨く仕上げ作業です。地味な作業が多いんですよ(笑)」

Q4 「gan well」の特長は?

「誤解を恐れずに言えば、特長というのはないのかも。選手のオーダーに応え、勝てるバイクを作るのが仕事。ブランドや自分の個性を出そう!とは考えていません。だからこそ、丁寧なヒアリングを心がけています」

Q5 フレーム製作へのこだわりは?

「絶対に壊れないように気を配っています。溶接不良で競争中に壊れてしまっては、選手は勝負に勝てませんから。ウチを選んでくれているからこそ、自信を持ったフレームしか出したくないと思っています」

Q6 競輪選手じゃなくてもオーダーできる?

「もちろん! 一般の方からのオーダーも受け付けていますし、ロードバイクなども作れますよ。納期はかかりますが、最高の一台をお届けします。気軽にお問い合わせください!」

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紙面掲載日:2021年7月
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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