自転車でやってみた! no.17 ピストのお勉強 自転車にまつわるあれこれを楽しく探求してみる連載。今回は編集部さなけんが、20代の頃に憧れつつも、未体験だというピストバイクについて。アラフォー男子がついに(いまさら)ピストに初乗車。しかも、職権を乱用して工房の見学まで!? いや、よい記事を届けるためのお勉強です!
text by 眞田健吾(編集部)
ピストの勉強① 乗ってみた
まずは、「gan well」のピストバイクを借りて人生初のピスト体験。変速がなく、ホイールが空回りする機構ももたない超シンプルな自転車。慣れるのに時間はかかったけど、こいだ分だけグイグイ進む感覚が楽しい![ ピストバイクってなに? ]
変速がない
ご覧の通り、前後ともにギアが1枚で変速機はなし。ギア比が変えられないので、速く走るには足を速く回すしかない! この潔さがピストバイクの魅力。固定ギア
ペダルを前に踏めば前進、後ろに踏めばバックするのが「固定ギア」。一般的な自転車は足を止めても進むが、固定ギアはできない。イメージは三輪車に近い。またいでみる
「いつも乗ってるロードバイクと同じでしょ」と思っていたけど、足を置くためにペダル位置を調整しようと思っても動かない。そうか、後輪も回さないといけないのか…。これが固定ギア!こいでみる
恐る恐るペダルを回してみると、おぉ、動いた!「こぎ出しがすごく軽い気がする。ペダルを回転させる力が、無駄なく推進力に変わっているような」と思いつつも、へっぴり腰(笑)。停まってみる
ブレーキを使えば問題なく停止可能。だけど、ピストバイクにしかできない止まり方にチャレンジ! 「ペダルを後ろに回すようにして、ゆっくり減速するんだ…」。結果は写真の通り。走ってみる
しばらく乗って慣れてきたところで、長めに走ってみる。前進する力でペダルが回転するからか、あまり力を入れずともグイッと進む感覚。「これはめっちゃ気持ちいい!」と上機嫌。*ブレーキ付きのピストで撮影。ブレーキがない場合は、公道を走行できません
ピストの勉強② 工房に行ってみた
ピストバイクは、そもそも競技用自転車。特に日本では、競輪用の自転車として活躍している。その自転車は、NJS(日本自転車振興会)に登録された工房でしか作れないハンドメイドフレームだそう。ピストバイクの最高峰、競輪フレームを生み出す「gan well」の工房を訪問! 若きビルダーに直接お話を聞いてみた。gan well
1976年にブランドを立ち上げ、1980年にNJSに認定。ピストバイクだけでなく、ロードバイクなどのフレームも製作。一般からのオーダーも受け付けている。
京都市南区久世殿城町162 / ☎075-874-6511/(京都オーダーフレーム工場)
https://www.iwaishokai.com/product/term/144
[ どうやって作ってるの? ]
パイプ&ラグ
フレームの素材となるパイプは、選手のオーダーや乗り方を考慮して最適な種類を選択。パイプとパイプをつなぐラグには「gan well」オリジナルのものもある。ヤスリ
パイプを切ったり、仕上げに磨いたり、作業や部位によって約20種のヤスリを使い分ける。先端を加工して使いやすくしたものも。紙ヤスリも頻繁に使用。冶具
「冶具(じぐ)」は、フレームを設計通りの角度や長さに作るための専用作業台。0.1度単位で角度を調整していく。もう一台、歪みを計測する冶具も使う。溶接
バーナーで「ロウ」と呼ばれる金属を溶かし込んでパイプを接合。はんだ付けに近いイメージだ。部位によって真鍮ロウ、銀ロウなど3種を使い分ける。[ ビルダーへ質問! ]
Q1 競輪フレームは街乗りピストと何が違うの?
「設計上の細かな違いはありますが、大きな違いはありません。ただ、競輪フレームはNJSで厳密に規格が定められています。たとえば、使用できるパイプが決まっていたり。規格の中で工夫して作ります」Q2 選手からはどんなオーダーがあるの?
「詳細なオーダーもあるし、『グッと伸びるように』と抽象的なオーダーもあります。そんな場合は、選手の体格、走りのクセ、戦法などを考慮して、パイプ選びや設計の数字に落とし込みます。競技中の映像も参考にしますよ」Q3 1本のフレームを作るのにかかる時間は?
「だいたい3日くらいですね。これに加えて、打ち合わせや設計する時間も必要になります。ちなみに、溶接する時間は3時間ぐらいで、半分以上はヤスリで丁寧に磨く仕上げ作業です。地味な作業が多いんですよ(笑)」Q4 「gan well」の特長は?
「誤解を恐れずに言えば、特長というのはないのかも。選手のオーダーに応え、勝てるバイクを作るのが仕事。ブランドや自分の個性を出そう!とは考えていません。だからこそ、丁寧なヒアリングを心がけています」Q5 フレーム製作へのこだわりは?
「絶対に壊れないように気を配っています。溶接不良で競争中に壊れてしまっては、選手は勝負に勝てませんから。ウチを選んでくれているからこそ、自信を持ったフレームしか出したくないと思っています」Q6 競輪選手じゃなくてもオーダーできる?
「もちろん! 一般の方からのオーダーも受け付けていますし、ロードバイクなども作れますよ。納期はかかりますが、最高の一台をお届けします。気軽にお問い合わせください!」YouTubeチャンネル「cycleweb」も見てね!
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紙面掲載日:2021年7月21日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です