13回目の夏と、自転車 「坂内拓 描き下ろし作品」

cycle創刊50号記念の表紙は、イラストレーター・坂内拓さんによる描き下ろし作品をお届け。坂内さんは日常風景を情緒的にとらえたコラージュ作品を得意とし、広告のほか、書籍や雑誌、音楽分野で活躍中。www.bannaitaku.jp

 「自転車に乗っているときの気分が好きなんです」。6月下旬、今回の表紙作品を描き下ろしてもらった、坂内拓さんへのオンラインインタビューで印象的だった言葉だ。

自転車に乗っているときの気分は爽やかで、軽い。乗って移動ができる。こぐ力だけで遠くへ行ける。そんなポジティブなイメージを思い浮かべて、坂内さんは作品に自転車を取り入れるそうで、「自転車はどんな風景にも似合う」と語る。

紙のコラージュ作品からキャリアをスタートし、現在は主にデジタルで切り絵のような技法で絵を作っていく坂内さん。まず大きな 色の面を置いていき、主張させたい要素を目立たせる。「見た人が入り込める余白をもたせるため、描き込みすぎたり、説明しすぎたりしないように意識しています。ぼくの住む東京は情報にあふれているから、ゴミゴミしていない風景や自然が好き。どこかで見た景色や自分がリアルに見た景色をミックスして “自分が見たい景色”を作っていきます」。

そうやってできた景色に自転車があると、新しい物語が始まりそうな予感がする。今回の表紙を飾ったのは海の景色。けっこうな距離を走ってきたのか、3人組は波の音を聞きながら休憩中。この先へこぎだしたら、どんな景色が待っているんだろう? そしてゴールは?「見たい景色」は自分で作れると気づいたら、ペダルをこぐ足が軽くなった。
 
text by 杉谷紗香(編集部)
紙面掲載日:2021年7月21日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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