特集

Winter2022

no.52

WEB掲載日

2022年2月10日

自分にできることを、きょう、始めよう cycle的SDGs Action04:知る
自分にできることを、きょう、始めよう 

cycle的に「SDGs」を考えてみるお勉強企画。Action:04は「知る」。もっとSDGsに貢献するためにできることって、あるのかな? ここでは世界のSDGs的な取り組みをご紹介。日本でも実現する方法、考えよう。

気候変動や地球温暖化、貧困、ジェンダー平等など世界のさまざまな問題を改善するために、国連が掲げた「SDGs(エスディージーズ)」っていう目標、知ってる?最近よく聞くキーワードだけど、一人ひとりでは実際、何ができるんだろう? cycle的に考えてみるお勉強企画。
もっとSDGsに貢献するためにできることって、あるのかな?ここでは世界のSDGs的な取り組みをご紹介。日本でも実現する方法、考えよう。

自転車で農業をサスティナブルに

ペダルをこいで世界を変えるコーヒー農場に希望の星!

ペダルをこいで世界を変えるコーヒー農場に希望の星!

青い自転車にまたがってペダルをこぐ皆さん。実はこれ、収穫されたコーヒーの果実から果皮と果肉を取り除く脱穀の様子。 普段何気なく飲んでいるコーヒーだが、その生産現場は数多くの課題を抱えている。コーヒー生産の大多数を占める小規模農家では、高価な脱穀機の導入は難しく、収穫したコーヒーをそのままの状態で出荷するしかない。しかしそれらは非常に安値で取引され、生産コストを賄うことさえ厳しいという。

そんな現状を変える新機軸が、この小型で安価な自転車式脱穀機だ。小さな農場でも導入が容易で、脱穀などの生産処理を行うことで豆に付加価値が生まれ、取引価格が上昇する。正当な対価を得ることで、農場で働く人々が仕事に誇りを持つことにもつながる。また従来の脱穀機に利用される燃料や電力、大量の水は不要で、環境にもやさしい。

低コストで環境負荷ゼロ。画期的な自転車式脱穀機は​小規模農家を救うと、グアテマラはもちろん、各国で話題に。

豆の乾燥はビニールハウスで。機械式乾燥によるCO2排出と、天日干しによる天候の影響や虫害の心配も緩和された。

収穫されたばかりの果実。脱穀した果皮や果肉は、乾燥してポリフェノールたっぷりのお茶に! WEBで購入可。

この脱穀機を開発したのは、東京に本社を置く「GOOD COFFEE FARMS」。代表のカルロス・メレン氏の祖国、グアテマラで質の高いスペシャルティコーヒーの生産、輸出入、販売を行う同社では、農場をさまざまな形で支援している。たとえば脱穀した果肉や伐採した木のアップサイクル、繁忙期以外に副収入が得られるトウモロコシ畑の導入など。そんな持続可能な農業のあり方に自転車も一役買っているって、ちょっとうれしい。

text by 足立知子(編集部)

 
取材協力 GOOD COFFEE FARMS www.goodcoffeefarms.com
 

自転車フレームの再利用

ママチャリが砂漠の国へ笑顔を届けるアップサイクル

ママチャリが砂漠の国へ笑顔を届けるアップサイクル

東UAEの都市・ドバイで2014年に創業した「CHARICYCLES」。パレスチナ人の姉妹であるラニア・カーンとザイナ・カーンの二人が販売するのは、日本の中古ママチャリをアップサイクルしたオリジナル自転車だ。

中東貿易の中継地であるドバイには、日本で廃棄された自転車のフレームもたどり着く。そこに注目した姉妹は、車体を分解してフレームをきれいに掃除した後、40色以上の中から客のオーダーに合わせてカラフルに塗装。サドルやタイヤなどのパーツをカスタムして販売している。公式サイトやSNSに登場する自転車たちは、ママチャリの面影はあるものの、姉妹のセンスが活かされた個性的でかわいらしいものばかり! それだけでなく、これまでの活動で推定約5万kgのCO2排出量を抑制し、環境に貢献した点にも注目だ。

ラニア・カーンとザイナ・カーンの姉妹。自転車産業の規模が小さいドバイでは自転車部品を入手するのに苦労するそう。

「CHARICYCLES」の自転車たち。カラーリングとカスタムに姉妹のセンスが光る。

また「ギブバック・プログラム」の取り組みも興味深く、これは5台の自転車が売れるごとに、1台の自転車を中東の難民キャンプで暮らす子どもたちへ寄付するというもの。これまで150台以上も寄贈してきた。「自転車に乗るとき、どんな子どもも自由を感じます。私たちはすべての子どもがその権利と自由を持てるようにしたいんです」とカーン姉妹は語る。中東の地で新たな命を吹き込まれた日本のママチャリは、子どもたちを笑顔にするため、遠く離れた砂漠の国を走る。

text by 眞田健吾(編集部)

 
取材協力 CHARICYCLES www.charicycles.com
 

自転車の楽しさを伝える

「自転車の楽しさ」を語ってシェアして共感を広げる

「自転車の楽しさ」を語ってシェアして共感を広げる

「BIKE MINDS」は、2018年にカナダのトロントで始まった、一人ひとりがもつ、パーソナルでポジティブな「自転車の物語」をシェアするストーリーテリング・イベント。開催ごとに「自転車+○○」とテーマを設けて、ライフスタイル、アイデンティティ、子ども、キャリアなどさまざまな話題を、リラックスした雰囲気の中で扱う。物語を披露する語り手は一般人というのも特徴で、地元密着の活動をする人、カナダへ移住してきた人、子ども、障害をもつ人と多種多様だ。

2019年に開催された「Bikes + Community」の回。トロントで活動する自転車コミュニティの主催者や参加者が語り合った。

コロナ禍以降はオンライン開催を実施。カナダ以外からの語り手が登場できるようになり、世界的なイベントに。

自転車ショップなどを会場にトロントとオタワで開催。80以上の“物語”がシェアされた。

クルマ社会のトロントでは自転車環境への不満も多いが、「自転車に乗ることそのものが祝福される場を作りたくて」と主催するマット・ピンダーさんは語る。イベントに共感する人の輪は広がり、コロナ禍以降はオンラインイベントも実施して世界各地から参加者が集う。“普通の人が自転車の楽しさを話せる場”の温かさが新たな交流を生んでいる。

text by 杉谷紗香(編集部)

 
取材協力 BIKE MINDS bikeminds.ca
 
紙面掲載日:2022年1月14日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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