世界の自転車ニュース no.52 より安全な選択肢を! コペンハーゲンの自転車道で自転車用エアバックが普及 「デンマーク・コペンハーゲン」

Text by 小畑和香子(ライター/フランクフルト在住)

分離した襟のような形のホーブディングを着用し、自転車歩行者専用橋を走行する女性。

昨年9月中旬、デンマークでコロナ感染防止策がすべて解除された頃、首都コペンハーゲンを通った。スウェーデンから私が住むドイツへの陸路の途中にあるこの地で自転車に乗るのが魂胆。ドイツとの自転車インフラの差を感じつつ、あることが目に留まった。スウェーデン発の自転車用エアバック「Hövding(ホーブディング)」の着用率の高さだ。

 

ヨーテボリ中央駅のデザインショップで販売中の最新モデル「Hövding 3」。

市民の半数以上が自転車を通勤・通学手段に選ぶコペンハーゲン。朝のラッシュ時に自転車交通量の多い交差点で張り込んでみた。すると、黒いマフラーのようなモノを付けた自転車利用者がどんどん現れる。二段階左折時の一時停止中に確認してみると、9人中4人が着用していることもあった。

2005年、2人の女学生が開発したホーブディングは、これまでに約30万個を日本含む15か国以上で販売。2019年発売の最新モデルは、従来の自転車用ヘルメットより頭部の保護性能が8倍も高いという。スマートフォンにBluetoothで接続すれば、エアバックが開くと同時に、指定した緊急連絡先にメッセージが送信される機能も備わる。
 
 

スウェーデン語で首長という意味のホーブディング。利用者の動きを秒間200回感知し、事故時は0.1秒で開く。写真: Alexander Crispin

「より多くの人が自転車を選択すれば、健康にも気候にも良い」。スウェーデン・マルメにある同社のヴィジョンは、隣国首都の市民ニーズに合致している。それを可能にするのは安全性の高い自転車インフラの存在だ。構造的に車道から 分離された自転車道も、自転車のための信号優先制御(グリーン・ウェーブ)もまだスタンダードではないドイツ。“自動車交通”に対してヘルメットをかぶる国にとって、“混み合う自転車道上で利用者同士が事故する危険”なんて異次元である。

2022年からドイツ市場にさらなる販促を仕掛けるホーブディング社。同社のモットーのように「不可能を可能に」してゆくのだろう 。
 
紙面掲載日:2022年1月14日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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