サイクルスタイル no.54 自転車の聖地・尾道で、持続可能な野菜づくりとビール×自転車の夢 「トーマス・ コレップファーさん(英語教師・Pitchfork farms代表)」 www.pitchforkfarms.jp

尾道に初めて来たのは?

「2010年にインターンシップでアメリカから初来日。その後、2011年に英語教師として尾道市の向島に赴任しました。同時に、現在の場所を借りて農業を始めました」

自転車好きが遊びにきたら、どこへ行く?

「アメリカから来た兄と一緒に、四国・中国エリアを走りました。自転車を輪行して岡山、鳥取、大山へも。実は輪行ってアメリカではNG。日本でしかできない旅です」

トーマスさんの野菜はどこで買える?

「直接販売が中心で、畑に来て購入、もしくは公式サイトからのオーダー。畑を見て安心して食べてもらうことができるし、直接買ってもらうとフードロスが減らせます」

野菜をたっぷり入れたカゴを自転車で牽引しながら現れたのは、広島県尾道市で環境循環型農園「Pitchfork farms (ピッチフォークファームズ)」を営むトーマス・コレップファーさん。11年前にアメリカから来日し、現在はしまなみ海道の向島で、農家と英語教師の二足のわらじで暮らしている。

相棒は、日本での初任給で購入したTREKのクロスバイク。「アメリカで住んでいた街では毎年有名な自転車のレースがあり、よく見に行っていましたね。子どもの頃からMTBに乗って、弟と森の中を駆け回っていました」と語るように、自転車はずっと身近な存在だったそう。ちなみに来日前、しまなみ海道の存在は知っていた?「知らなかった。当時は調べても、英語で得られる尾道の情報は少なかったですね」。

有機栽培で育てた旬の野菜を自転車の牽引カゴに乗せて。契約者に毎週野菜を届けるCSA(Community Supported Agriculture:地域支援型農業)で農園と消費者をつなぐ取り組みも実践中。

いま、トーマスさんは、自転車のエネルギーを使ってビールを作る 計画を模索中とか。えっ、ペダルをこいだらビールができるとか?「ビールを作るための電力をペダルパワーでまかなっているお店が、米・オレゴン州のポートランドにあるらしいんです。

それにアメリカには、自転車と良い関係を築いている大きな規模のブリュワリーがたくさんあるのがおもしろいですね。たとえばお店へ行く際、クルマじゃなくて自転車で行くとポイントがもらえて、ディスカウントを受けることができるような仕組み。そういった取り組みをしている企業は、持続可能なエネルギー、価格、ゴミ問題、すべてをつなげて、うまくビジネスを回しています」。

そういえば昔、ポートランドを旅したとき、自転車をこいでジューサーを動かして作るジューススタンドを見かけました。「そう、そういうのが向島には合っていると思う! いまはクリーンエネルギーが必要で、ヒューマンパワー、ソーラーパワー、そして身体に良い自転車のパワーのことを、もっと考えるべきじゃないかな」。

自然豊かな向島で、自転車のエネルギーが作り出すビール。そして楽しく、地球にやさしいトーマスさんの想い。実現する日が待ち遠しい。
text by 横井良祐(サイクリスト)
紙面掲載日:2022年7月28日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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