世界の自転車ニュース no.55 フランクフルトで初開催! 世界最大規模の展示会は 「モビリティショー」へ 「ドイツ・フランクフルト」

text by 小畑和香子(フランクフルト在住)

今年のユーロバイクは7月13日~17日の5日間開催。前半3日間は商業ビジターが33,780人、一般向けの後半2日間は27,370人が来場し、成長著しい新たなモビリティを体験した。

「サイクリングからモビリティへ」。30年にわたりドイツ南部で開催され、世界最大の自転車展示会の一つに数えられるまで成長した巨大メッセ「ユーロバイク(EUROBIKE)」は、そう題してドイツの真ん中にやってきた。
 

ユーロバイクのフランクフルト環境賞を受賞し、壇上に上がる「フランクフルト自転車市民決議」。この市民イニシアチブなしに、近年の自転車インフラの変化を語れない。

このメッセ移転の報に何より歓喜したのは地元フランクフルトの自転車コミュニティだろう。誰もが安全に自転車を利用できる走行環境を目指し、そのインフラ改善のため、草の根デモクラシーに奔走。長年、この地で開催されてきた自動車産業展示会に反対する自転車デモを成功させたとき、これ以上にないメッセ移転劇が起こり、自転車交通に追い風を吹かせた功労者たちがユーロバイクの壇上に上がるなんて、知る由もなかった。

そんなここ数年の自転車交通を取り巻く変化は、会場のあちこちで見ることができた。初日メインステージに招かれた元ニューヨーク市交通局長ジャネット・サディク=カーンは、「技術力ではなく想像力の問題(が自転車インフラの改善を阻んでいる)」と説いた。さらに、連邦交通大臣の後に登場したモビリティ専門家カティヤ・ディールは、従来型のスムーズな交通に比重を置く政策からモビリティの貧困解消を目指す政策への転換を訴え、会場から多くの支持を得ていた。
また、カーゴバイクの躍進が目覚ましかった。10年前はほんのわずかだったカーゴバイクのメーカーは今年、1,500の出展者のうち50以上に増加。2日目午後に開催されたパネルディスカッション「カーゴバイクと政治」で聞くことができた、この分野を牽引する担い手たちの言葉はとにかくポジティブだった。ドイツ二輪車工業連盟の政治担当の女性は「気候危機のいま、カーゴバイクで乗用車をリプレース(置換)することは必須」と主張。また、オランダ発のカーゴバイクシェア事業者Cargoroo創業者は、2030年にカーボンニュートラルになるためのリプレース計画をシェアした。

 

パネルディスカッション「カーゴバイクと政治」にて、連邦交通省が作成したカーゴバイクのステッカーを持って。

そう、ユーロバイクは自転車と未来のモビリティのプラットホームとなり、エネルギーシフト、そして交通シフトという社会的な課題に貢献するため、新たな場所で再出発をしたのだ。来年は自転車交通国家会議とユーロバイクの連動開催を予定。ドイツの自転車環境はいま、変化の真っただ中にある。
 
 
紙面掲載日:2022年10月21日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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