世界の自転車ニュース no.56 みんなでPedal Poll! ボランティアのチカラでカナダ全土を自転車調査「カナダ・オタワ」

text by ドロレ利恵 (自転車活用推進研究会理事/オタワ在住)

クルマを気にしないで走れるマルチパス。休日は子どもも見かけるが、数値では圧倒的に成人白人男性が多かった。

Vélo Canada Bikes(ベロカナダバイク)という非営利組織がある。目的は「Cycling forEveryone, Everywhere.(すべての人たちに、すべての場所でサイクリングを)」。私もオタワに来た4年前、当時開催された会議に参加し、すぐにメンバーになった。

2021年の「Pedal Poll」、都市別人種比較。人種や種別などは国勢調査の数字と比較できてわかりやすい。

そのベロカナダバイクが2021年からボランティアを集めて自転車調査(Pedal Poll)を始めた。調査は1日で、朝7時から18時の間で、1人2時間、定められた場所で自転車をカウントする。

カウントする内容は基本的な人種、性別、年齢。人種は、ホワイト、東アジア、先住民、南アジア、中近東、ブラック、ラテン、その他。性別は男性、女性、その他。年齢は子ども、大人、シニアにわけられている。人種調査はかなりデリケートで、それにふれることに対しての意見も多いが、「把握しなければ何も始まらない」と、思い切って進めたらしい。実は私も、“それ”が気になっていた。というのは、移民が増えているのに、自転車に乗っているのは白人がほとんどなのだ。
2022年のPedal Pollは、6月のある1日にカナダ全土で実施され、私もカウントに参加した。参加したボランティアの数は前年より少し増えたそうで、連携した各地のコミュニティが30で、全国で71のコミュニティが参加して登録ボランティアは900人超。調査時間は合計1,500時間に達した。

カウントは「CounterPoint」アプリをスマホに入れ、事前に登録した場所へ行き、指でスクリーンをなぞるだけ。カウントを担当する場所もアプリの地図上に写真入りで示されているので間違えることはない(もちろんスマホがない人向けに印刷用も用意された)。アプリの操作動画や、準備をまとめたPDFも提供され、事前場所登録も今回はアプリで簡単に登録できたうえ、カレンダーでリマインドまでしてくれた。とにかく何ごともスムーズで、直感的に理解できるのがすごい!
 

筆者の住む、首都オタワの調査結果。

実際にカウントして感じたのは、白人男性が多かったこと。普段よく見かけるシニア層ももっと多いのではと思ったが、圧倒的多数は成人白人男性。しかも国勢調査より、どの都市も白人の割合が多い。調査結果は公式サイト(www.velocanadabikes.org)で公開されている。2022年分の数値がどのように国の施策やインフラ整備に反映されていくかが楽しみだ。
 
紙面掲載日:2023年1月20日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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