ニュース

Spring2023

no.57

WEB掲載日

2023年6月21日

華やかで、泥くさい。「女性版ツール」に注目! 「ツール·ド·フランス·ファム2023」
2023年7月23日(日)~30日(日)
www.letourfemmes.fr

「ツール・ド・フランスの女性版が33年ぶりに復活したんだって」。昨夏、SNSを中心に話題になっていた女性版ツールって、一体どんなレース? 7月下旬に始まる今年の本番前に基礎知識を知りたい!ということで、昨年のレース開催時に現地からPodcast配信を行っていた自転車ジャーナリストの小俣雄風太さんに、今年の見どころや注目選手について解説してもらった。華麗なレースを応援しよう!

「ツール・ド・フランス・ファム2022」最終日前日の山岳、沿道のファンの熱い声援にグルペット(最後尾集団)の選手たちが手を振って応えた。

昨年、ツール・ド・フランスの女性版レース「ツール・ド・フランス・ファム(Tour de France Femmes)」が33年ぶりに開催されたことは自転車界にとって最大のトピックだった(“ファム・ファタル”で聞き覚えのあるファムとは、フランス語で女性の意)。

スタート前に特別賞ジャージの選手たちがセルフィー。男子レースではあまり見ない微笑ましい光景。(以下、写真はすべて2022年開催時のもの)

過去のレースと異なり、男子ツールと同じ主催者が同じ運営体制で開催したことから、ほとんど初開催と言ってよい「真の女性版ツール」が実現した。リニューアル記念大会は、パリ・シャンゼリゼに始まり、フランスを東へと進みながら超級山岳で最終日を迎えるという1週間のレースとなった。最終日にはフランス国内のテレビ視聴者が500万人超えを記録したが、これは男子ツールの平均よりも高い数字だったという。

グラベル(砂利道)が採用されるなど、レースの難易度はやはり高い。

1週間を通じて取材をしていて強く印象に残ったのは、日に日にスタート/フィニッシュ地点の人出が増えていったこと。そして将来のプロ選手を夢見る少女サイクリストたちが沿道で期待に目を輝かせていたこと。また、走る選手自身が、大勢の観客の前を走れることに感激していたことも忘れられない。

最終表彰台。栄光の初代マイヨジョーヌに輝いたのはアネミエク・ファンフルーテン(中央)。

さて、2年目を迎える今年は、フランス中部クレルモン・フェランを7月23日にスタートして、スペイン国境近くの南仏ポーへフィニッシュする1週間のレースが予定されている。最終日に個人タイムトライアルが初めて採用され、より多くの選手が活躍する舞台が整えられた。

昨年覇者のアネミエク・ファンフルーテン(モビスター)は、41歳を迎える今年限りで引退を表明している。現世界チャンピオンである彼女が、虹色のジャージの上に黄色のマイヨ・ジョーヌを重ね着するのか、注目が集まる。

オランダ期待の若手で昨年2位の雪辱に燃えるデミ・フォレリング(SDワークス)や、底抜けに明るいキャラクターでファンを魅了するセシリーウトラップ・ルドヴィグ(FDJスエズ)らスター選手のほか、今年は與那嶺恵理(ヒューマンパワードヘルス)が日本人初出場を叶える可能性があり、注目したい。

観戦のためスペインから訪れたという女子サイクリストは、国内ジュニア選手権を走る選手たち。将来はプロになりたいと目を輝かせた。

距離が短い女子レースは、度重なるアタックの応酬になりやすく、観ていて非常にエキサイティング。華やかな選手たちが時に泥くさくぶつかり合うレースには、自転車レースの美しさが凝縮されている。

日本でも「J Sports」で毎日生放送されるので、今年は美しいフランスの風景と、魅力的な選手たちが織りなす1週間のストーリーに浸かってみてはいかがだろう。

text & photo by 小俣雄風太(自転車ジャーナリスト)
執筆のほか実況も行う自転車ジャーナリスト。昨年は男子ツールとツール・ファムを全日程取材し、現地からPodcast「Arenberg"Daily Tour"」を連日配信。今年も取材予定。
arenberg.press
text & photo by 小俣雄風太(自転車ジャーナリスト)
紙面掲載日:2023年4月28日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
関連記事