インタビュー ちかっぱ(メッセンジャー)
2022年はサッカーW杯カタール大会での日本代表の快進撃が話題になったけど、自転車の世界でも、ものすごい快挙があった。それが、10月末にニューヨークで開催されたメッセンジャーの世界選手権「CMWC(CycleMessenger World Championship)」での日本人ライダーの優勝! ニューヨークの地でチャンピオンに輝いた“ちかっぱ”さんに、世界戦について話を伺った。聞き手は「CMWC 2023 Yokohama」発起人のラスカルさん。

text by ラスカル(編集者)

コロナ禍の影響を考慮して、2年連続でCMWCは延期・中止となっていたが、2022年に入って「CMWC 2022 NYC」(Instagram:@cmwc.nyc)の開催が急遽決定。今回は翌年のCMWC開催都市の横浜を代表して、ちかっぱ含めて3人がニューヨークへ訪れた。「CMWC 2023 Yokohama」は2023年の夏以降に開催予定! Photo by Takuya Sakamoto
Instagram:@cmwc2023

メッセンジャー世界大会で日本人チャンピオンが誕生!

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ラスカル
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ちかっぱ

Photo by Takuya Sakamoto

R開催が急遽決定したCMWCに参加するにあたって、どんな意気込みだった?

C今回は(CMWC 2023 Yokohama発起人のうち)サンテとラスカルはもちろん、日本から行きたくても行けなかった人はいただろうし、そういう人たちの気持ちも汲んで参加しようっていう気持ちはあった。

自分としてはモントリオールで開催された2016年のCMWCの流れでニューヨークは行ったことがあったから、今回は2回目だった。前入りして、最初の2日間ぐらいは自転車にも乗らずにのんびりすごしてたよ。

R今回のニューヨークでのCMWCは、これまで参加したCMWCと違った点はあったかな?

C現地の準備はバタバタで、デリバリーレースは当日エントリーも多かった。CMWC自体にもそれほどお金はかかってなかったけど、オーガナイザーのビクターがクラフトビールを作りたくて、それに4,000ドルぐらいはかけたみたい。あと今回のCMWCはNACCC(北米選手権)も兼ねていたから、チャンピオンバッグとフレームはそれぞれにあって、俺は優勝したからどれでもいいぞって。

R 念願のチャンピオンとなったデリバリーレースのエピソードを改めて振り返ってほしい。

C 今回はほぼノーミスだったし、予選3位の時点で正直手応えはあった。振り返ると過去のCMWCでは、誰かに期待して、自分には期待しきれてないところがあって。でも今回に関しては、初めて自分に期待できた。「俺、勝てる。俺しかおらん」ってハッパかけて。

ただ、優勝のイメージをしたら負けるとも思ったから、それは最後までしなかった。優勝は狙うけど優勝した自分はイメージしないというか、“パズルの最後のワンピース”だけない感じ。集中してノーミスでやったらいけると信じて、五感を研ぎ澄ませて走った。

それで最後、「まだあるかもしれん、次のマニフェスト(指示書)くれ」って思ったところで「Over, You finished.」って言われて......もう緊張の糸が切れて涙がぶわーっと出てきたね。レジェンドたちも、帰ってきた2位や3位のやつらもみんな祝福してくれた。

 

R ちかっぱにとってニューヨークのCMWCはどんな意味や価値を持つイベントだった?

C今回のCMWCは急遽決まったし、ある意味、メッセンジャーの本場のニューヨークじゃないと実現できてないと思う。だから俺は「開催してくれてありがとう」っていう気持ちだったし、ドタバタでも不満はなかった。

メッセンジャーにもたくさん会えたし、優勝できたし。あと、ビクターは、「今度お前はモンスタートラック(ニューヨークで開催される世界でも最も有名なアーレーキャットレース)に出るべきだ」とも言ってくれたしさ。

 

Photo by Takuya Sakamoto

R 夢見てきた世界チャンピオンになったことによって、自分自身や周囲の変化は感じる?

CCMWCが終わって燃え尽きた感はあって、帰国して2週間は自転車に乗ってなかった。それで気づいたらJCMC(2022年11月開催の日本大会)の週。あんなに注目されて走ることは、いままでなかったなって。JCMCは勝てなかったけど、ニューヨーク含めて俺にしかできないことをできたなって、いまは思う。優勝するまでだいぶ時間はかかったけどね。でも一生できなかったかもしれないことをこのタイミングで叶えられたのは、純粋に実力だけじゃない何かがあったんだろうね。

ニューヨークに来てないメッセンジャーは、コロナで3年間もCMWCに参加してないわけで。今回俺がニューヨークでチャンピオンになって、みんなにメッセージは伝えたから、今年横浜で開催されるCMWCには世界中のメッセンジャーたちが来てくれると思う!


 

話を聞いた人ちかっぱさん

横浜で唯一のメッセンジャー会社・Courio-City所属。「CMWC(Cycle Messenger World Championship)2023 Yokohama」の発起人のひとり。CMWCにおいては通算8度目&6大会連続参戦となった「CMWC 2022 NYC」のデリバリーレースで、日本人3人目&13年ぶりの世界チャンピオンとなった。 Photo by Takuya Sakamoto
Instagram:@chikappa_tonpin



text by ラスカル(編集者)
都内の編集プロダクション、メッセンジャー会社を経て、現在はフリーランスの編集者・インタビュアー・ライターとして活動。2017年からCMWCの招致活動をサンテ&ちかっぱとスタート。2018年と2019年のCMWCでの立候補を経て、2021年・横浜での開催権を獲得。コロナ禍での延期を経て、今年いよいよ「CMWC 2023Yokohama」の開催に向けて奔走中! 
Instagram:@rascaaaaal
紙面掲載日:2023年1月20日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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