サイクルスタイル no.57 めぐりあえたら超レア! ペニーファージングで子どもたちに体験の場を 「CHAROさん(移動型セレクトショップオーナー・木工作家) 」 instagram:@cheki_charo3939

自転車に乗り始めたのはいつ頃?

「小学生の頃からMTBや父のお古のロードバイクに乗っていたので、昔から自転車にはなじみがありました。ペニーファージングに乗り始めたのは3年ほど前です」

お仕事は?

「木工作家です。イベントで木工雑貨やセレクトアイテムを販売したり、子ども向けに木工の体験教室をするかたわら、ペニーファージングの乗車体験もしています」

どれくらいの頻度で乗っていますか? 

「日常で乗れる利便性はないですが、毎週のように全国どこかのイベントへ。『The TWEED RUN Bishu Nagoya』や『Critical Mass Nagoya』に参加したことも」

愛知県岡崎市に住むCHAROさんの活動に欠かせない相棒は、「ペニーファージング」という19世紀後半に誕生した自転車。チェーンがなく、こげばこぐほど前輪の大きさの分進むために時速40km程度でも走れるという、速度を重視した乗り物だ。

当時は木製フレームで、ブレーキもなかったが、CHAROさんのものは現代版にアップデートされた素材で、ブレーキ、反射板、ヘッドライトなども自分でカスタム。「日本では買えないので、ペニーファージングを製造しているイギリスの『Unicycle』で購入し、パーツが組んである状態で輸入しました」。

イベント出店は、東海地方をメインに、マルシェや自転車関連、アウトドアのイベントに参加することが多い。活動情報はInstagram(@cheki_charo3939)で公開中。

車体の後輪側にある踏み台に足をかけて乗り降りするのだが、「どこを調べてもくわしい乗り方の説明がなかったので、買ってから3か月くらいは乗るのが怖くて部屋に放置してました(笑)。4回くらい落ちて乗れるように。曲がる時は、足を伸ばして開かないと車輪が太ももに当たって転んでしまうんです」。

なかなかコツがいるようだが、イベントではCHAROさんが支えてくれるので、大人も子どもも乗ることができる。「ほかの自転車と違うのは、見晴らしがとても良いこと。自転車という身近なものを通して、100年前の景色を感じられるんです」。

購入を思い立ったのは、木工作家として独立を決めた頃。同時期にコロナ禍が始まり、学校教育の中であらゆる体験の機会が子どもから奪われている事実を知った時だった。

「僕らが当たり前に経験したことを経験できずに成長した子どもたちは将来、次世代に何を伝えられるんだろう、と思って。自分が何か与えられないかと考えた時に、たまたまペニーファージングを知ったんです。乗ってみたい!という衝動に駆られたと同時に、きっと子どもたちにとって一生モノの体験になるだろうと思いました。自転車の歴史では、この自転車を経て、安全で速く走れるチェーンが生まれたわけで。自転車に乗るという体験を一つの入口にして、ものづくりの背景に少しでも興味を持ってもらえたら」。

もし、彼とその相棒に出会えたら、童心に帰ってこの爽快な乗り心地を味わってみよう。
text by 山田美法(cycle編集部)
紙面掲載日:2023年4月28日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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