世界の自転車ニュース no.61 R.I.P. #Natenom 自転車アクティビストが道路交通の犠牲になった時 ドイツ・プフォルツハイム
text by 小畑和香子(ライター/フライブルク在住)

2月11日の追悼ライドで事故現場に設置されたNatenomのゴーストバイク。彼のマスコット、ゾウのぬいぐるみとOpenBikeSensorを付けて。
写真:ADFC Köln

プフォルツハイム検察庁前で行われた、追悼ライド前の集会。スピーチをした自転車ロビー団体・ADFC連邦理事メンバーは、日常化した自動車の暴力を銃に例え、それを無視し続ける検察に対し、「公共の関心はここにある!」と訴えた。写真:ADFC Köln
また、「OpenBikeSensor」を用いて自動車に追い越される際の側方間隔を測定し、管轄の警察にそのデータを持ち込んで追い越し時の危険性を繰り返し訴えた。側方間隔は、市街地では1.5m、郊外では2.0m維持することがドライバーに義務付けられている。
しかし、これらが守られないどころか逆に脅迫を受け、警察と検察はクルマ側の視点に偏った判断をする現実があることを、彼は自転車コミュニティに共有し、世間に知らせていた。
さらに、それぞれの街で追悼ライドが行われ、全国紙を含めた各メディアが一連のできごとを報じた。そして彼が犠牲となってから2週目の週末には、事故現場に白く塗装された「ゴーストバイク」を設置する追悼ライドが企画、実行された。

アプリ「Critical Maps」は本来、ルートを定めないクリティカルマスへの途中参加を容易にするために使われる。2月11日にはコメント欄に「ろうそく」の絵文字があふれた。
しかし、ここまで規模の大きな動きがかつてあっただろうか。生前、自身に“もしものこと”があれば、それを利用してほしいと願っていたNatenomの遺志は、私たちの中に灯っている。道路交通を少しでもヴィジョン・ゼロ―死亡事故のない世界に近づけるために。
#Stopkillingcyclists
紙面掲載日:2024年4月19日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です