［エッセイ］　身近な戦跡を巡る大阪自転車散歩
特集「ヒロシマ・ピース・サイクリング」に関連して、大阪に残る第二次世界大戦の痕跡を、鉄道好きの自転車店店主・Bici Terminiの宮崎さんにレポートしてもらった。　bicitermini.com

text & photo by 宮崎浩二（自転車店 Bici Termini 店主）

機銃掃射による大阪城石垣の破損個所。

今年は戦後80年ということもあり、当店周辺で、平和をかみしめるサイクリングをしてまいりました。

まずは当店南側の長堀通を東進し、JR大阪環状線の玉造駅へ向かいます。ここでは橋脚などに無数に残っている機銃掃射跡が今でも確認できます。

JR玉造駅に残る空襲の機銃掃射跡。

そのまま線路脇を北進して中央大通を渡り、大阪城公園へ入ろうというところで、線路は高架から地平へ下ります。現在東側は森ノ宮電車区、西側は大阪城公園ですが、古い地図を見ると大阪城の濠に沿った敷地も含めて、線路の両側が砲兵工廠だったようです。

よく聞く話では城東線の車窓から工廠内をのぞかれないようにとのことですが、貨物線や工廠内への引き込み線との接続のため、勾配を避けたかっただけのような気もします。

大阪城公園の南東角から、当時の敷地境界に沿うようにランニングコースが整備されていますが、ちょうど大阪城ホールの脇に砲兵工廠跡の石碑があります。1945年8月14日、終戦の前日に大阪大空襲があり、砲兵工廠は完膚なきまでに破壊されたとのことです。

機銃掃射による石垣の破損個所も保存されています。これらの史跡には詳細な案内板があり、往時をしのぶことができます。

すぐ近くの天守石垣には、空襲の際の爆風で石垣がずれてしまっている箇所が。現在は遺構を残しながら、ずれが進行しないよう補修されています。

大阪城公園の北側には第二寝屋川が流れており、当時は水運により工廠へ物資搬入がなされていたようです。今では跡地に大阪城ホールなどが建設され、水門は内側より埋め立てられています。

JR京橋駅南側の「爆撃被災者慰霊碑」。

そのまま川沿いを東へ進むと、JR京橋駅の南側へ出ます。当時は片町線という名称で、現在の学研都市線です。駅南口に慰霊碑があり、その案内板によると、8月14日の空襲で城東線と片町線の京橋駅が被弾。多数の乗客、避難していた方々が何百人も犠牲となったとのこと。

後年になって、大東市の方が私費で慰霊碑を建立されたそうです。自転車を停めて手を合わせてまいりました。

走行距離は数km程度でしたが、当店すぐ近くに点在する戦争遺構を巡るサイクリングでした。戦後80年が経ち、のんびり自転車に乗って散策できる“今”のありがたさ―。平和を改めて実感する良い機会になりました。

紙面掲載日：2025年7月24日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です