連載

Summer2025

no.66

WEB掲載日

2025年8月15日

世界の自転車ニュース no.63 デンマークから支援!ウクライナ国内の避難生活を支える自転車 デンマーク&ウクライナ

text by 岩佐岳仙(都市研究家) photo by Bike4Ukraine

ウクライナの首都キーウで、爆撃を受けたブチャ地区を自転車で走る親子。

「Bike4Ukraine(バイク・フォー・ウクライナ)」はデンマークの都市デザイナー、ミカエル・コルビル=アンデルセンらが立ち上げたデンマークの非営利団体だ。西ヨーロッパの中古自転車をウクライナの都市に送ることを目的とし、資金調達や輸送の手配を行っている。

ウクライナに届いた自転車とミカエル。Bike4Ukraine www.bikes4ukraine.org

2022年2月にロシアの侵攻が始まってから2か月後、ウクライナのリヴィウ市では国内難民が急増し、市の人口の28%にあたる20万人に到達。その多くが自動車で避難して来たこともあり、市内では渋滞が深刻化し、公共交通機関にも大きな影響が出ていた。

その状況を受け、同市の都市計画に携わるミカエルの同僚から「都市の移動問題は自転車で解決できるかもしれない」と連絡が入った。ミカエルはすぐ仲間たちに声をかけ、自転車をウクライナへ届ける手段を模索。そうして始まったのが「Bike4Ukraine」だ。

2022年7月には、早くもコペンハーゲンで中古自転車の回収イベントを初開催。集まった100台もの自転車はその日のうちにトラックに積まれて、ウクライナへと出発。ベルリンやブダペストなどでも同様の回収イベントが行われ、活動はヨーロッパ各地へと広がった。
「Bike4Ukraine」で自転車を届けたウクライナ各地の都市や難民キャンプを、ミカエル自身も頻繁に訪れている。ある地方の町では、82歳の男性が瓦礫の中から5~6台の自転車を掘り出し、1台に組み直していたそうだ。戦禍の中で、人々がいかに移動手段を必要としているかが分かる。

同団体の自転車は、2024年後半までにウクライナのNGOネットワークを通じて35以上の都市や町に届けられた。当初の目標は2,000台だったが、何度もウクライナを訪れる中で、自転車のニーズが何万台規模にのぼることを実感したという。

リヴィウ市の難民キャンプにて、自転車の受け渡し。Bike4Ukraineでは、活動寄付金募集中! Bike4Ukraine www.bikes4ukraine.org

ミカエルは語る。「私たちが届けた自転車はたった1台で、1年間に平均18,000kmを走り、12,000kgもの生活必需品を運び、5,000人もの人々を助けているのです。自転車が活躍することで、バンやトラックは本当に必要な場面に集中でき、限られた燃料や輸送力を有効活用できます。これまでに届けた自転車は1,300台。それらは今、ソーシャルワーカーやボランティアの重要な足となり、国内で最も弱い立場にいる人々に支援を届けています」とさらなる支援を呼びかける。
 
紙面掲載日:2025年7月24日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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