手作りの自転車で逃げた日 映画『モンキービジネス おさるのジョージ著者の大冒険』
『モンキービジネス おさるのジョージ著者の大冒険』の1シーン。1940年、ナチス・ドイツの侵攻から、レイ夫妻は自転車で避難。山崎監督は作品の中で、二人の経験をより“リアル”に伝えるため、世界中から集めたアーカイブ映像と原画の数々、手書きのアニメーションを織り交ぜて構成した。
そんな驚愕の事実を教えてくれたのは、作者であるレイ夫妻が切り抜けた戦時下の体験談と、アメリカ移住後のサクセスストーリーに迫ったドキュメンタリー映画『モンキービジネス おさるのジョージ著者の大冒険』。
ユダヤ人の二人はホロコーストが始まろうとしていた恐怖に包まれる中、自分たちで組み立てた自転車で滞在中のパリに侵攻してきたナチス・ドイツからの避難を試みた。表紙で紹介したのは劇中の一場面。同作を監督した山崎エマさんに制作エピソードを聞いた。
「このシーンは当時の避難風景を記録した映像に、手描きアニメーションで表現したレイ夫妻の姿を重ねて制作しています。動く二人が画面にいることで、本当にそこにいたわけじゃないかもしれないけれど、“この場にいたかもしれない”と想像してもらえることが大切。アニメーションだけでは戦争の過酷さが伝わりきらない懸念もあったので、全体のメリハリを意識して構成を考えました」。
爆撃で破壊され、戦車が走る街を、自転車や徒歩で避難する人々。記録映像を見ると、当時の街角では、意外と自転車に“乗って一目散に逃げる”人は少ない様子。山盛りの荷物や子どもを自転車に載せて“押し歩き”する人が多かったのが印象的だ。
「自転車って、ただの移動手段ではなく、人々の人生をつなぐ道具でした。もし歩いて避難していたら、一つでもタイミングを逃していたら、レイ夫妻の人生だって本当にどうなっていたか分からない。二人は戦争について多くを語らなかったけど、生きざまがまさに“ストーリーテラー”。戦争について知るきっかけは、あればあるほど良いと思います。映画を通して関心や共感を持ってもらえるとうれしいです」。
▶︎山崎監督へのインタビューは〈後編〉に続く! こちらからご覧いただけます
『モンキービジネス おさるのジョージ著者の大冒険』
絵本『ひとまねこざる』と『おさるのジョージ』シリーズの生みの親、レイ夫妻が戦時下で経験した波乱万丈な人生を綴る。監督・プロデュース・編集 山崎エマ/2018年/82分/配給 米 オーチャード、日本 エスパース・サロウ/DVD発売&デジタル配信中
monkeybusiness.espace-sarou.com
紙面掲載日:2025年7月24日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
