さあ、空想の旅へこぎ出そう ジャン=ミッシェル・フォロン《無題》
text by 足立知子(ライター)

ジャン=ミッシェル・フォロン《無題》
1981年 フォロン財団蔵
ⒸFondation Folon,ADAGP/Paris,2024-2025
音楽はもとより、そこに描かれた不思議な水彩画にすっかり目を奪われ、私たちは音楽が終わってもずっと描かれたものを想像し、語り合い、隅に記された「F O L O N 」の文字を頼りにジャン=ミッシェル・フォロンにたどり着いた。

ジャン=ミッシェル・フォロン《無題》
1981年 フォロン財団蔵
ⒸFondation Folon,ADAGP/Paris,2024-2025
フォロン財団の美術館はブリュッセル南部の古城「ラ・ユルプ城」敷地内の一角にある。周辺は広大な自然公園「ソワーニュの森(Forêt de Soignes)」でサイクリングにも最適だそう。
確かにそのジャケット画は、私をしばし空想の世界へと導いてくれた。やさしい色づかいの詩情あふれる世界、愛嬌のあるキャラクター。フォロンはそのファンタジックな作品に、現実世界で起きているさまざまな事象に対するメッセージをそっと忍ばせている。
左の絵もじっくり眺めてほしい。ペダルの付いた歯車をこぐ人たち。楽しそうにも見えるけど、おや、このままこぎ続けるとどうなってしまうのだろう。3人は同一人物? こちらを向いた視線は何か訴えているような……。ほら、気が付くとあなたもすっかりフォロンの世界に迷い込んでしまったのでは。
そんな謎に満ちたフォロンの作品、約230点が一堂に会する展覧会が開催されている。ドローイング、水彩画のほか、彫刻やオブジェ、アニメーションなども展示されるとか! この機会に、フォロンからのメッセージを探しに出かけよう。
空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン
開催中〜2025年6月22日(日)at あべのハルカス美術館
ジャン=ミッシェル・フォロン(1934–2005)は世界中を旅し、その経験を創作のエネルギーにしていた。日本では30年ぶりとなる今回の大回顧展は、彼の没後20年と、自身が生前に設立したフォロン財団25周年を記念して開催される。
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