レポート

Autumn2022

no.55

WEB掲載日

2022年12月20日

漁師と一緒に走り、学ぶ!神戸・漁村サイクリング 「EAT LOCAL KOBEサイクリングツアー漁村編」 10月8日(土)at 神戸市内
eatlocalkobe.org

尻池さんの拠点、長田・駒ヶ林漁港へ。普段は入れない漁港内も尻池さんの案内で、船の間近まで近づいて見学。

“神戸に暮らし、ローカルを食べる”をキーワードにマルシェやイベントを神戸市内で企画する「EAT LOCAL KOBE」が、サイクリングツアーを初企画!漁村のガイド役は現役漁師の尻池宏典さん、自転車面のナビゲートは本紙特集「釣りと自転車」にも登場した神戸SPARK scone & bicycleの冨田さん。海の知識が豊富なお二人とともに、半日の神戸市内ライドへ。
 

左から順に案内役の漁師・尻池さん、SPARK冨田さん、参加者の皆さん。尻池さんは神戸で船びき漁を営む漁師チーム「KOBE PAIRTRAWLINGS」の一員で、愛車はTern製のEバイク「Vektron」。

スタート地点はメリケンパーク。数分走って、クルーズ船が並ぶ観光地の波止場で尻池さんが立ち止まる。「ここから見える海に、実はものすごく豊富な種類の魚たちがいるんですよ」と教えてくださり、初盤からびっくり!

「ここのすぐ南にある和田岬から須磨浦にかけての一帯が神戸の漁師の漁場です。六甲山から降りてくるミネラルを含んだ地下水が西向きの潮の流れをつくり、瀬戸内海から来る東向きの潮の流れとちょうど良くぶつかり、栄養いっぱいの海になって魚がたくさん生息しているんです」と尻池さん。そんな豊かな神戸の漁場で約200人もの漁師が日々活動していると聞き、漁の規模にも驚く。

垂水漁港「水産会館」でゴール!ツアー参加者は7名で、地元神戸の方が多数。「神戸の海が豊かだと初めて知った」「漁師が抱える悩みを知ることができた」という声も。

ツアーは、神戸沖の海岸線に沿って西へ。兵庫運河から、長田の駒ヶ林漁港、東須磨の須磨漁港、塩屋漁港と、”漁港しばり”で寄り道しながら、各漁港では尻池さんのガイドで地元の漁師さんとの対話の時間も。漁港ごとに得意な漁や、船と漁場の特徴、地形と潮の関係について教えてもらうことができ、それまで造船所や工場ばかりと感じていた神戸湾岸部の見え方が一気に変わった。

また、途中の須磨海岸ではEAT LOCAL KOBEが主催する「FARMERS MARKET」に立ち寄り、海苔やちりめんじゃこなど神戸産の自慢の海産物が食卓に届く様子も見学できた。

しらす漁・いかなご漁の傍ら、海の生態系を再生する活動も行なう尻池さんは、「海の生態系を早く改善しないと、いずれは神戸で漁ができなくなってしまう」と切実に語りかけていたのが印象深い。潮風を感じながら、海と漁業の未来に思いをはせる、約20kmの“巡って考えるサイクリング”だった。
text by 杉谷紗香(cycle編集部)
紙面掲載日:2022年10月21日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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