レポート

Autumn2023

no.59

WEB掲載日

2023年11月30日

[エッセイ] 輪行旅 線路になるはずだった場所 サイクリングシーズンの秋、到来。ということで、ビギナーにもおすすめな輪行サイクリングについて、鉄道好きの自転車店店主・Bici Terminiの宮崎さんに語ってもらった。舞台は大阪府南部のローカル線、水間鉄道。

text by 宮崎浩二(自転車店Bici Termini店主)

水間観音駅は水間寺の三重塔にちなみ、二重塔を模した意匠。国の登録有形文化財。

つい先日、書籍で見かけて気になっていた、大阪府貝塚市を走る水間鉄道の未成線跡を探索してまいりました。午前中はちょっと私用がありましたので、お昼すぎから出陣。見どころを盛り込みながらも、コンパクトにまとまったルートにしたつもりです。

コンクリート製「橋台跡」が残る田んぼにて。稲穂に阻まれまったく見えず!

ということで、愛車のBROMPTONを輪行して、南海電鉄・なんば駅から急行で貝塚駅まで。ここから水間鉄道へ乗り換えます。

1950年頃、途中の清せちご児駅から分岐し、和歌山県の粉河町(現在の紀の川市)までの延伸が計画・着工されましたが、頓挫してしまったそう。今回の輪行旅では、その遺構をたどってみようというわけです。

ほどなく清児駅で下車。近くにあった町内案内板をチェックしてみると、駅から分岐している線路予定地跡の表記を発見!若干読みづらかったのですが、「水鉄道用地」と書かれているようでした。

近くに流れる川を渡り、線路予定地跡の延長上にあたる場所までやってきました。田んぼの中にコンクリート製の「橋台跡」が残っているようですが、稲が元気に生育しているせいでまったく見えませんでした(笑)。ちょうど中央部分、茂みがちょっとあいているあたりです。付近にも同じような橋台跡が残っていたようですが、既に取り壊された後でした。残念!気を取り直して次のポイントへ進みます。

「路盤跡」は農道として整備され、列車になったような気分で走れます。

先ほどの橋台跡からゆるやかにカーブしながら、線路の土台である「路盤」を形成していた部分が道として残っており、自分と愛車が列車になったかのような気分で進んでいきます。やはり、元々が鉄道を敷設する予定だったため、勾配、カーブともに非常にゆるやかです。未舗装路ですがBROMPTONでも非常に走りやすく、おもしろい道でした。

最後のポイントは、住宅地の中に大きく伸びる「用地跡」。都市計画道路・泉州山手線と平行する計画だったようです。現在では宅地化がかなり進んでおり、周囲を走って調べた限りでは、目立った痕跡を見つけることができませんでした。残念!

さて、現時点での走行距離は6km程度。「これではサイクリングではないな...」と思い、ひとまず水間観音駅まで移動しようと、GPSでルートを設定してシャーっと走っていると、偶然にも阪堺電車・モ161形車両の保存車の横を通りかかりました。今回は時間の都合で立ち寄れませんでしたが、隣には乗馬クラブとイタリア料理店があるみたい。このあたりも良く整備された未舗装路で、まさに快走!とても気持ちの良い道でした。

ということで、無事に水間観音駅へ到着。しかしながら、列車の時間まで20分ほどある。ホームで待っても良かったのですが、まだまだ走り足りない感じもあり、貝塚駅まで走ってしまうことに。7km程度の距離しかないので、すぐに到着。貝塚駅からは輪行にて帰宅いたしました。

水間鉄道は路線距離が短く、基本的に平坦な路線です。日曜にはサイクルトレインが予約制で運行されていますし、終点の水間観音駅からすぐの水間寺と、その周辺の歴史を感じさせる街並みはすばらしいものです。鉄道建設に関わる痕跡が残っているうちに、ちょっとした散策はいかがでしょうか。

 
紙面掲載日:2023年10月27日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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