サイクルおすすめ BOOK 屋台から眺める風景に まちの未来を描く― 「日本のまちで屋台が踊る」 yataibook.stores.jp

text by 越智政尚(「本の轍」ショップキーパー)

自転車は普段使いの足として欠かせないものであるばかりか、ロードバイクだとまるで羽でも生えたようにどこまでも走っていけそうな特別な乗り物にもなる。そして商いの観点でいうと、自転車ってミニマルな移動店舗としても使えるんだよね。

「日本のまちで屋台が踊る」
中村睦美、今村謙人、又吉重太 編 2,530円 税込(屋台本出版)

本書は屋台の魅力や存在意義、街に与える影響を、実践者へのインタビューと専門家の話を通じて考察する一冊となっている。三輪カーゴバイクを屋台仕様にしてキューバサンドを売る主婦、東京を浮遊するがごとく場所を変えつつ、蝋燭のゆらめく屋台でアルコールを提供する元銀行員など、登場する“屋台人”の生き方はさまざま。

僕の友人にも古本を自作の屋台に積んで販売する方がいて、彼は滞在した街で本を仕入れて次の街へと渡り歩く強者だ。「機会があれば京都あたりで一緒にどう?」なんて誘われたこともあるが、かつて、戦災後に屋台を含む露店が闇市から発生して市場を作り、やがて都市の再生につながったように、ひとつの“まち”をも形成できる可能性を秘めた「屋台」。そう、おもしろいことは常に路上から生まれるのだ。
紙面掲載日:2024年4月19日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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