飲み終わったコーヒーのかすどうしてる? mame-ecoプロジェクト

ゲーリー&順子・ブルーム
WEB: mame-eco.org Instagram: @mame_eco

text by 佐藤文絵(環境系ライター)

夫婦二人で小さく始めたmame-ecoプロジェクト。誰でもコーヒーかすを持ち込める「収集スポット」は現在10か所になった。

古都・京都の住人は、意外と多様だ。いろんな人がいろんな場所からやって来て暮らしている。だから京都は風通しがよく、とても楽しい。LA出身のゲーリーさん、東京出身の順子さんもそんな二人。いま彼らは日々、自転車で京都の町を走り回っている。その目的はコーヒーかすの回収...って、どういうこと?

朝早い時間に自転車こぎこぎ、回収へ。「移動中は、季節のうつろいを感じる大好きなひととき」とゲーリーさん。

きっかけは大好きなコーヒーを淹れた後のモヤモヤだった。おいしく飲んだ後には、かすが残る。コーヒーかすには養分がたっぷり含まれている。水分も多いため「燃やすごみ」として捨てると燃焼を妨げ、焼却炉内でエネルギーのロスが起こってしまう。何だかいろいろもったいない...。

そんな時、ごみ減量を訴える京都市のチラシに二人の目がとまり、ためていたモヤモヤと合致。コーヒーかすを集めて、農家へ手渡すプロジェクト「mame-eco」を2020年にスタートさせた。

「まさかバケツを乗せることになるなんて!」順子さんの子乗せ電動自転車も大活躍。自転車の前後にバケツを搭載。

最初からうまくいったわけではないけれど、だんだんと輪が広がって、参加を申し出るコーヒー店が増加。回収を担ってくれるボランティアも現れ、京都でのコーヒーかすの循環は軌道に乗った。現在は50か所ほどからコーヒーかすを回収する。

活動を始めて4年分の累積回収量は、なんと60トンを超えた。集めたコーヒーかすは、近郊の農家が堆肥化するなどして土壌へ還し、野菜やお米の栄養になっている。それから、キノコの菌床にも!

いちばん頑丈なものを、とUP CYCLESにリクエストして探してもらったWALDのカゴ。新聞配達用でとても大きい。

自転車は好き?と直球な質問をしてみたら、ゲーリーさんの話は止まらなくなった。18歳でSCHWINNのマウンテンバイクを買い、ハリウッドヒルズに自分のコースを作って毎日走っていたこと。大学時代はメッセンジャーとしてビバリーヒルズを疾走していたこと。カナダへの長い自転車旅...などなど。

いまの相棒は、来日後に購入したSPECIALIZEDのマウンテンバイク“Hardrock”。25年ほどの付き合いで、mame-ecoのメイン回収車だ。後方にはトレーラーを取り付け、積載量をアップする工夫も。

それにしても京都の夏は暑く、冬は寒い。とりわけ夏の回収は過酷なのでは?「It’s OK!京都は自転車にとってヘブン!最高の街だよ」と笑顔だった。

収集スポットの一つ、「UP CYCLES」店頭のバケツで回収!営業時間中に受付。  Instagram:@up_cycles.kyoto

さて、コーヒーかす回収に協力する「収集スポット」の一つに自転車店「UP CYCLES」がある。店主ザッキーさんもコーヒーかすをごみ箱に捨てることを「なんだかなあ」と思い、mame-ecoプロジェクトに加わった。「自分も気持ちがいいし、自転車の用事がない人も店に立ち寄ってくれるのが楽しい」と話す。受け渡しがてら、世間話でも交わすのかも。
コーヒーかすは、捨てたほうがたぶんラク。でも置いておいて、持って行けば、ちょっとした良い時間になりそうだ。そしてコーヒーかすが土となり養分となり、野菜として戻ってくることを想像すると、だいぶうれしい。
text & photo by 佐藤文絵(環境系ライター)
京都在住。循環する暮らしを研究。コーヒー好き。コーヒーかすはコンポストにして小さな畑で使っている。愛車はKHSのミニベロと子乗せ電動自転車。
Instagram:@foohome
紙面掲載日:2024年10月31日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
関連記事