世界の自転車ニュース no.62 Velo-city開催地! ベルギーのヘントを走るコミュニティバイクとは ベルギー・ヘント

text by 小畑和香子(ライター/ドイツ在住)

カーフリーなエリアにCARLAあり? Eバイクでカーゴトレーラーを牽引していた。

2024年6月18〜21日、ベルギーのヘントにてECF(欧州自転車利用者連盟)主催のフラッグシップイベント「Velo-city」が行われた。この自転車交通の国際会議は1980年にドイツで初開催されて以来、自転車利用と持続可能なまちづくりの未来を形作る場として、毎年異なる都市で催されている。今回急に参加が叶い、60か国から1,600名以上という過去最多の参加者が集うこの“会議”の枠を超えた大イベントを堪能することができた。そのハイライトの一つが、多くの街ではまだ当たり前ではない新たな自転車活用の姿だった。

「Velo-city」の会場の一つは、1913年のヘント万国博覧会のために建てられた、歴史ある自転車競技場。www.velo-city-conference.com

場内は80以上の全体会議とセッション、90以上のブース出展をメインに構成。会場外では19のガイドツアーがスケジュールされ、これらに参加すればベルギー第3の都市に暮らすフラマン語圏の人口約27万人のヴィジョンと自転車インフラ実装の現状を体験できる。中でも、「ヘントはまだ自転車都市ではない」と語る地元自転車利用者団体が企画した改善ポイント指摘ツアーに興味をそそられた。しかし会場が雨漏りするほどの天気に阻まれ、最も多く予定が組まれていた「一夜のモーダルシフト物語」に参加することに。
そのツアーを担当したヘント市は、2017年に循環計画と呼ばれる大胆な交通計画を実行した。一夜にしてルールを変え、市内中心部約7.5km平方メートルへの自動車流入を防ぎ、環状道路へ迂回させることでカーフリーな市街地を作ったのだ。その結果、中心部への自転車の通行が急増し、2030年までの目標としていた自転車交通分担率35%を2018年には達成したという。2時間半のツアーでは約10kmを市の担当者と巡り、「一夜のモーダルシフト物語」の要所となった各地点でそのストーリーを聞くというものだった。

日本使節団は、今回は約50名で参加。「Mamachari〜!」と展示車に引き寄せられているのはフランスからの参加者。www.velo-city-conference.com

するとツアー中、驚くべき光景を目にした。ドイツの黒い森地方発のカーゴトレーラー「CARLA CARGO」が牽引されて街を走る様子を短時間に4台も見かけたのだ。うち1台はちょうど荷積みを終えて出発前。声をかけると、社会奉仕活動の一環で恵まれない人のためにパンとバナナを運んでいるとのこと。ツアー参加者たちの目を釘付けにして彼女は颯爽と去っていった。今回のVelo-cityの開催テーマ「Connecting through Cycling」を感じられる街角がヘントにはあった。
 
紙面掲載日:2025年1月31日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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