マディソン突撃レポート! no.48 BFFで小さな世界旅行へ 今回は自転車映画祭「Bicycle Film Festival」スペシャル。表紙コラム「バーチャル映画館でBikes Rock!」に続いて、マディソンが今年のBFF東京についてレポート。BFFファンの彼女が語る、バーチャル開催ならではの楽しみ方とは?おウチ映画館の幕が、いま上がる!

text by マディソン(ライター)

「おウチでBFFを観れる時代が来るなんて!」。映画館気分を楽しむマディソンと息子さん。

自転車映画祭「Bicycle Film Festival(BFF)」が東京に戻ってきたのは、2022年の一大ニュース!私自身、BFF東京にはすてきな思い出がいっぱいある。ただ、東京まで観に行きたい気持ちがいくらあっても、小さな子どもが2人いるし、東京までの交通費も必要。言い訳に聞こえるかもしれないけど、もう20代のメッセンジャーと同じようにはできなくなってきた。
 

ナイジェリア。BMXと出会った仲間たちが人生を語る。『LAGOS BMX CREW』Nigeria, UK/2018年

シアターで観たい気持ちが、便利さに負ける。さらに、息子が通っている小学校から学級閉鎖のニュースが届く。......Oh!そんな状況の私にとって、このバーチャル開催は本当に助かる。昼間なのに部屋のカーテンを閉め、ポップコーンなどのおやつとドリンクをたっぷり用意したら、おウチの“映画館”でBFFを楽しむ準備は万端!

今年のプログラムはよく言えば、社会科の授業に自転車マニアの視点を加えた内容。オープニングの作品で目にしたのは、「あれっ、大阪城や~ん!?」。上映時間はトータル110分のはずなのに、気づいたら半日近くも、10歳の息子と二人で映画の話をしていた。いままで見たこともない物事がプログラム作品にたくさん出てきて、息子は興味津々!

ナイジェリアが舞台の『LAGOS BMX CREW』では、学校の教科書でしか見たことがなかった街並みが映された。大都会ラゴスのマココ地区にある水上家屋で暮らすライダーSKingが「BMXが僕の人生をどんなに変えたか」と語る姿が印象的だ。ラゴスのストリートシーンはにぎやかで、水上の舞台でトリックを決めるSKingがとにかくカッコ良い。

 

自転車で男女は出会い、そして...。3分のショートフィルム。『THIS IS WHEN WE MET』USA/2015年

ところで、BFFを一緒に観ていると、息子からの質問がびっくりするほど多い。「何で競輪はスポーツとは違う、っていうの?」と『KEIRIN: LEADER DON'T CRASH』を観た後に聞かれたし、ラブストーリーの『THIS ISWHEN WE MET』を観た後は「何で殺されるところだったの?」などなど。『KING OFTHE MOUNTAIN』にはルワンダ虐殺の話も出てくるから、そこから話し始めれば、そりゃあ長い話になる。息子にとっては、小学校が休校の間にスポーツ、交通マナー、世界の歴史、道徳などを大人とじっくり話すことができる良いチャンスになったと思う。

事故で片足を失ったライダーの1年に渡るドキュメンタリー。『LEO RODGERS』USA/2020年。

字幕が入らないタイミングには、映像に引き込まれた瞬間が何度もあった。私が地元大阪で走ってきた道も『Rapha Rides Osaka』にはたくさん出てきて懐かしかった。ニューヨークメッセンジャーの『HUNTRESS』のシーンや、伝説のビデオグラファー、ルーカス・ブルーネル氏による美しい映像が見られる『LEO RODGERS』も心に残る。映画の再生をいったん止めて、自転車に乗りたくてたまらなくなるから。それだけは注意!

オンラインでのバーチャル開催も、良いものだと改めて感じた今回のBFF東京。期間中ならいつでもどこからでも見ることのできるメリットは大きい。プログラムを一気見しなくても、途中で自転車に乗りに行っても楽しい。お気に入り作品が見つかったら、期間内に何度でも繰り返し観たって良い。

世界のいまを捉えた自転車のストーリーを映像美とともに味わうことができて、プログラムを見終えた後は、言葉であらわし尽くせないほど、私の“自転車の心”が満たされた。半日で、小さな世界旅行ができた気持ち。ブレントさんと同じように、私もBFF東京チームに最上の感謝を伝えたい。軽く言わせてもらうけれど、本当に、来年の開催を、いまから楽しみにしてる!
 
紙面掲載日:2022年10月21日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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