表紙コラム

Spring2021

no.49

WEB掲載日

2021年7月21日

自転車と恋と町中華 「松虫あられ『自転車屋さんの高橋くん』コミック第1巻 表紙原画」

物語の舞台は岐阜県某市。出会ったばかりの「第1巻」、表紙の高橋くん&パン子は、微妙な距離感だったが、「第3巻」表紙ではこたつで仲良く、温まる。じんわりと胸を焦がされる恋の行方から、ますます目が離せない!

自転車と恋と町中華

町中華と、町の自転車屋には、共通点が多い。どんな町にもあり、困ったら頼れて、いつでも駆け込める。そして、たいていが個人経営で、高齢化のため減少傾向にあり、どこか “昭和”な香りがするところも一緒だ。
『自転車屋さんの高橋くん』にも「中華飯店 将ちゃん」という町中華が登場する。高橋くんの幼なじみ、まさやんが親から引き継いで切り盛りする店で、ひょんなことから主人公のパン子は高橋くんとこの店を訪れる。外観を見て、「汚そう…」とつぶやいたパン子だが、カウンター席に座り、メニューを見るだけで、よだれが止まらない。天津飯、レバニラ、水餃子と、飾らない実直な味がずらりと並び、夢中でがっつくうちに、パン子は自分が本音で話せる“居場所”を少しずつ見つけていく。
実はこのシーンの前、パン子は自転車修理のお礼にと、高橋くんを小綺麗なレストランに誘っている。しかし、それは“本心”ではないと彼は見破ったのか、「なんか違う」と言って、「中華飯店 将ちゃん」に案内する―。この場面だけでなく、二人の関係性の変化を表現するのに、町中華のシーンが効果的に挟み込まれ、物語が一気にドライブしていくので、ページをめくる手が止まらないし、お腹も鳴る。
本音を言えないことがコンプレックスだったパン子は、本音しか言えない高橋くんにふれ、少しずつ心の強さを得ていく。コロナ禍にあり、「自分が本当にしたい何か」を封印することが多いいまこそ、本心に正直になりつつあるパン子の成長をうれしく思うのだろう。
あの町にもこの町にも、いますぐ自転車で走って行きたい町中華がある。そういえば、名水で有名な岐阜の街で教えてもらった、老舗の“酢なし中華”、また食べたいなぁ。

「自転車屋さんの高橋くん ③」松虫あられ著(リイド社)

年下ヤンキーの自転車屋さん×内気なアラサー女子OLのピュアな恋模様を描いたWEB連載漫画。最新話はトーチwebで毎月第1水曜日更新。コミックは累計17万部越えの大ヒットで、2021年1月刊行の第3巻が絶賛発売中。

text by 杉谷紗香(編集部)
紙面掲載日:2021年4月23日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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