[コラム] 元メッセンジャーかく語りき ② 「パズィテーブリ―前向き」 元メッセンジャーの自転車店スタッフが、メッセンジャーへの思いを自由に語る特別コラム。2本目は、名古屋の「Circles」に勤めるもんじゃさんが語る、写真を通して感じた視点の変化について。

写真アプリで過去をさかのぼってみると、僕がメッセンジャーとして東京の街を走り始めたのは2004年の夏らしい。

最初の研修で「とりあえずここ回ってきて」と渡されたリストには、ガーデンプレイスや西麻布交差点、テレビ局、印刷工場など、よく行く配達先が20~30か所書かれていた。特に指示されたわけではないけど、その時に各場所で撮った写真がいまも残っている。

そもそも、自転車より都市や建築に興味があってメッセンジャーを始めたこともあり、毎日、東京を観光気分で走ってはスナップ写真を撮っていた。けれど、当時はまだスマホもなければ、SNSもない時代。撮りっぱなしでどこかにアップすることもなく、自分で見返すこともなかった。その後、さまざまな写真管理アプリの登場によって過去の写真を整理し、簡単にアクセスできるようになって、ようやくこれまでのフォトアーカイブを見返すことができた。

天現寺の裏道にあったこの喫茶店、覚えてる? 当時のメッセンジャーなら知ってるはず。

当時は、性能が貧弱なコンパクトデジタルカメラで撮っていたので画質は悪いけど、それらの写真―というよりも、そこに写る東京の都市風景―は、いまでも新鮮でおもしろいと感じるものばかりだった。目を輝かせて走り回っていた、メッセンジャーになりたての頃の写真は特におもしろく、時間が経つにつれて、段々と撮影する視点が陳腐になっていくのも興味深い。どんなに刺激的な毎日でも、いつか慣れがやってくるのだった。

その頃は新人研修も担当していたから、いろいろな新人と接する機会があった。すぐ辞めてしまうメッセンジャーも多い中、仕事が続く人とそうでない人の違いは、毎日の仕事後に「きょう、こんなおもろいコトあったんですよ~」と報告してくれるかどうかだった。

これはおそらく、どんな仕事でも、どんな生活でも一緒だと思う。フレッシュな視点で、常に変化していく世界に興味が持てるかどうか。自分のそういう”記録”と”記憶”が残るフォトアーカイブをたまに眺めてニヤニヤすると同時に、外に出す機会を伺っている。
書いてくれた元メッセンジャー

 

もんじゃ
元ソクハイ&アローメッセンジャーサービス。現在はCirclesで勤務しつつ、バイクロア実行委員会としても活動。

Circles circles-jp.com

紙面掲載日:2023年7月28日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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