人と人をつなぐ、コミュニティを広げる自転車のあり方 特集「街とコミュニティバイク」後編
街とコミュニティバイク

ジテツウなどの移動手段、スポーツ、旅——。自転車の存在は暮らしのあちこちに浸透したけど実は、もっとできることがあるんじゃない!?そこで今回は、コミュニティを生むツールとして自転車の可能性を考えてみた。街で活躍する「コミュニティバイクの世界」へ、ようこそ!

ジテツウなどの移動手段、スポーツ、旅――。自転車の存在は暮らしのあちこちに浸透したけど実は、もっとできることがあるんじゃない!? そこで今回は、コミュニティを生むツールとして自転車の可能性を考えてみた。街で活躍する「コミュニティバイクの世界」へ、ようこそ!

こどもえいご紙芝居号は「HAYA English Academy」の講師育成プログラムの一環で、全国各地へ出張も企画中。子どもたちの未来を育むため、英語のタネをまき続ける。

話を聞いた人:松谷愛さん、下寺孝典さん、松川哲也さん
松谷さん(左)は「POP-UP English!」を主催する英語教師。赤いカーゴバイクを使った自転車屋台の発案者、「TRUNK9」の中西寿道さんと出会い意気投合。中西さんの企画でプロジェクトが進行した。下寺さん(中央)は屋台建築家で、カーゴバイク搭載型屋台の設計・デザイン・制作を手掛けた。松川さん(右)はお披露目会場となった「ノーウェア土師ノ里」オーナー。
Instagram: @haya_english2

オリジナル紙芝居の第一弾は、バナナとペンギンのショートストーリー『バナナンギン』。こどもえいご講師育成プログラム参加のアーティスト、タイチコンドーさんが手掛けた。お披露目会はウォームアップの後に紙芝居、英語レッスンと30分にギュッと詰まった内容で大好評。当日はバナナケーキの振る舞いも!

カーゴバイクに後載せした屋台のこだわりポイントは、「角ばったデザインのカーゴバイクが親しみやすい印象になるよう、曲線を多用したデザインを採用しました」と語る屋台建築家の下寺さん。屋台部分は骨組みだけに分解でき、自転車とともに車載が可能。ハンドルに干渉しないサイズ感や素材の軽量化も工夫した。

街へ飛び出す! 英語の紙芝居

デンマーク製カーゴバイクBULLITTと紙芝居が出会って、異文化コミュニケーションを生む!? 「POP-UP English!」と名付けられたこの紙芝居屋台は、奈良を拠点に活動する「HAYA English Academy」のプロジェクト。2024年6月に始動し、今回取材に伺った大阪・藤井寺のコワーキングスペース「ノーウェア土師ノ里」で9月にお披露目された。

主催する松谷さんは英語教師。「ゲームよりおもしろい英語レッスン、というキーワードで『こどもえいご』を展開していて、その講師育成プログラムの最終課題が“英語でオリジナルの紙芝居を作って子どもに披露すること”。分解してクルマに載せれば、各地へ出張できる紙芝居屋台はピッタリなんです」。自転車屋台を広報・PRツールと位置付け、英語学習の裾野を次世代に広げたいと語る。

オリジナル紙芝居の第一弾は、バナナとペンギンのショートストーリー『バナナンギン』。こどもえいご講師育成プログラム参加のアーティスト、タイチコンドーさんが手掛けた。お披露目会はウォームアップの後に紙芝居、英語レッスンと30分にギュッと詰まった内容で大好評。当日はバナナケーキの振る舞いも!

カーゴバイクに後載せした屋台のこだわりポイントは、「角ばったデザインのカーゴバイクが親しみやすい印象になるよう、曲線を多用したデザインを採用しました」と語る屋台建築家の下寺さん。屋台部分は骨組みだけに分解でき、自転車とともに車載が可能。ハンドルに干渉しないサイズ感や素材の軽量化も工夫した。

話を聞いた人:富田寛(Tommy)さん
東京で10年以上のキャリアをもつ現役自転車メッセンジャー。バイクポロの選手として世界選手権に出場した経験もある。自転車はエコだからと乗り始めたそう。知人から譲り受けたオムニウムは、「チャリンコーヒー」から子どもとの移動まで幅広くこなす。自転車メッセンジャーならではの自由なカルチャーを体現している。
Instagram: @tommytomitahiroshi

チャリンコーヒーは電化製品を使わず、オフグリッドで湯沸かし。もちろんゴミも持ち帰る。「継続的にコーヒー豆を仕入れに行くのもコミュニケーション活動の一つ」とTommyさん。

浅草から芝公園を経由して池尻大橋まで、東京を横断した「母の日フラワーライド」。花屋さんのフラワーギフトで出てしまう端材をブーケにして、子どもたちとママに配る恒例企画。

ある年の「フラワーライド」は自転車乗車中に交通事故で亡くなった母子への献花に。親子で気持ちを寄せ、手を合わせた。

コーヒー屋よりは“パフォーマー”

高品質のコーヒーと必要な道具一式が運べるカーゴバイクを組み合わせ、「その場に居合わせた人たちとの出会いが最高のコミュニケーションを生む」と語るTommyさんのチャリンコーヒー。せっかく自転車で行くならと、割れにくい道具を選び、キャンプ用機材を使うなどオフグリッドにもこだわる。一回の出店で70〜80杯を提供するが、「販売数より大事なのは、そこで交わされる会話」と言う。出店するたび、次はもっとこうしよう!とアイデアが生まれるそうだ。

活動を始めたきっかけはコーヒー屋の友人を手伝ったこと。2016年にオムニウムを譲り受け、現在のスタイルに。災害復興や自転車大会の開催応援など、誰かを支える寄付活動に加え、フラワーギフトの端材をブーケにして親子に配る「母の日フラワーライド」も実施中。「最近は農業や食に関わる人との会話が楽しい」と語るTommyさんの活動は、出会いとアイデアの積み重ねで育まれ、自転車の枠にとらわれずに可能性を広げ続けている。

チャリンコーヒーは電化製品を使わず、オフグリッドで湯沸かし。もちろんゴミも持ち帰る。「継続的にコーヒー豆を仕入れに行くのもコミュニケーション活動の一つ」とTommyさん。

浅草から芝公園を経由して池尻大橋まで、東京を横断した「母の日フラワーライド」。花屋さんのフラワーギフトで出てしまう端材をブーケにして、子どもたちとママに配る恒例企画。

ある年の「フラワーライド」は自転車乗車中に交通事故で亡くなった母子への献花に。親子で気持ちを寄せ、手を合わせた。

text by 杉谷紗香(cycle編集部)&岩佐岳仙(都市研究家)

紙面掲載日:2025年1月31日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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