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Spring2021

no.49

発行日

2021年4月23日

サイクルおすすめ CINEMA「オリ・マキの人生で最も幸せな日」ユホ・クオスマネン監督

text by 足立知子(編集部)

二人乗りで走る並木道であるボクサーは恋に落ちた

「オリ・マキの人生で最も幸せな日」ユホ・クオスマネン監督
DVD発売中4,180円(税込)/デジタル配信中 販売/ブロードウェイ olli-maki.net-broadway.com

世界チャンピオンのタイトルマッチを目前に、恋に落ちたボクサーの物語。舞台は1962年のフィンランド。主人公、オリ・マキは実在のボクサー。欧州チャンピオンでありながら、ハングリー精神とは無縁の素朴な青年だ。友人の結婚式の日、知人のライヤと親しくすごすうち、二人の間に恋が芽生えた。大切な試合を控え、興行主からは減量や後援者の接待などを命じられるが、オリはまったく身が入らず…。
モノクロフィルムを使用し手持ちカメラで撮影された映像は、プライベートムービーのよう。自転車の前部にライヤを乗せて(『明日に向って撃て!』でロバート・レッドフォードたちがやってたアレ)、結婚式に向かうシーンが印象深い。美しい田舎道を走り、帰りは湖に飛び込んではしゃぐ二人。説明的なセリフや演出が極力排除され、淡々と進む物語の中、オリが恋に落ちた気配が静かに伝わってくる。何気ない場面に出てくる当時の自転車もかわいらしい。ボクシングが主題ながら、スポ根や汗臭さを感じさせないささやかなラブストーリーだ。
第69回カンヌ映画祭「ある視点」部門グランプリ受賞作品。