連載

Autumn2021

no.51

WEB掲載日

2021年12月27日

マディソン突撃レポート! no.44 自転車劇・BIKEPLAY アメリカ西海岸のポートランドでは「Pedalpalooza」という自転車フェスが毎年開催されている。その中の大人気 イベントが今回取材した「BIKEPLAY」。メンバーにオンライン取材したところ、プロデューサーで俳優のイートン・ノエルさんが応じてくれた。BIKEPLAYって一体、何?

text by マディソン(ライター)

BIKEPLAYの劇中より。中央に立つバイクコーチに困ったメンバーが相談するシーン。バイクコーチのアドバイスは「ダンスをすること!」。 写真:KJ Johnson Instagram:@bikeplay

ポートランドには、自転車を愛する人が集まり、個性あふれるテーマライドや自転車カルチャーを楽しめるフェスティバル「Pedalpalooza(ペダルパルーザ)」がある。通常、夏の1か月ほど毎日のように行われるが、その期間中、大人気なのが「BIKEPLAY(バイクプレイ)」。

取材に応じてくれたBIKEPLAYのイートン・ノエルさんによると「BIKEPLAYは、半分がオリジナル劇の上演、半分がグループライド」。今年で12回目の開催を迎えた。参加者はスタート地点に集合し、俳優たちと一緒に街中のステージをグループライドで周り、ステージごとに劇のシーンを一部ずつ野外で鑑賞する。

ライドの距離は8kmほどで、“ステージ”となる公園や校庭、教会のパーキングなどを順番に移動するのだが、「毎回、舞台となる場所が変わるし、劇もオリジナル作品なので、何度見に来ても新鮮な体験になるはず」とイートンさんは言う。

 

すべり台の上にいるキャラクターたちが自転車用チューブを手で持ち、ビデオ電話を演じるシーン。写真:KJ Johnson

開催ごとのアップデートも楽しみだけど、もちろん毎年、新たなチャレンジに向き合うのがBIKEPLAY。去年は新型コロナウイルスの影響で公演が中止となり、今年までその影響が長引いたそうで、「俳優たちが久しぶりに友達や家族に会いに行ける状況になると、通常よりも舞台稽古の時間を合わせるのが難しくなり、メンバー全員(10名)が集まれたのは今年に入ってから2回だけ。

また、多くの方が開催までにワクチン接種を受けることができるように例年なら6月中に開催するところ、最も暑い8月中に公演を実施することになりました」。熱波の影響で異常に暑かった今夏は、気温が46度になる日もあり、熱中症予防のため練習が中止になったほか、公演初日のオープニングナイトさえも中止に。

タイムマシンのシーン。時間の魔女の力でメンバーはタイムループから抜け出せなくなった! 写真:KJ Johnson

でも今年一番の良い思い出になるハプニングもあった、とイートンさんは語る。千秋楽の観客は200名ほどの大人数。最後の舞台には全員が入りきれないことを予想して目的地をバスケットコートに急遽変更したところ、「参加者全員が無事に現地へ到着した頃には暗くなり始め、コートには照明が点いていました。しかし、上演を始めてすぐトラブルで照明がすべて消えてしまった。そのとき、多くの観客が舞台を自転車のライトで照らしてくださり、温かい応援と光に包まれて最後のシーンへ。とてもスペシャルな雰囲気の中で今年最後のパフォーマンスを終えることができました」。あぁ、なんて感動的!
 

BIKEPLAYを救うため、時間の魔女・ジェニー(写真)は、BIKEPLAYが時間旅行できるように力を貸す。 写真:KJ Johnson

歌とダンスが混ざったBIKEPLAYのショーはユーモア満タンで、感動するシーンもあり、そして毎回の筋立てに自転車文化が大きな役割を果たしている。「映画、文学、ポップカルチャーなどさまざまなインスピレーションからBIKEPLAYの作品は生まれています。そして俳優は演技をするだけではなく、脚本の執筆、歌の作曲、パペット作りなど、それぞれの才能をショーで見せてくれます」。

唯一の日本人メンバー、佐藤陽平さん曰く、「自分の目で見てみないとわからないと思いますよ。経験したことのない楽しさやユニークな表現にポートランドらしさが詰まっているから、ぜひ生で観てほしいです」。Pedalpalooza開催中のBIKEPLAYを観に行くことが叶えたい夢の一つになった。入場料不要で、自転車さえあれば参加できる。それとポートランドへの航空券も必要だ。
 
紙面掲載日:2021年10月22日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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